スマートフォンの動画を見過ぎて「今月の通信量が3ギガバイトを超えた」と表示された。「ギガ」は、数の桁を表す国際単位系接頭語の一つ。メートルなど単位の前に使われる「キロ」や「ミリ」と同種の世界共通語だ
▼11月の国際度量衡総会で「クエタ」など四つの桁数が追加されるという。世界で消費されるデジタルデータ量が爆発的に増えたためだ。1クエタは1000000000000000000000000000000になる
▼7月の小欄で日本の国債残高1千兆円を表現する際、0を羅列して視覚に訴えた。それでも0は15個だった。クエタは0が30個も並ぶ。つまり10の30乗だ。10の右肩に付けた30は指数と呼ばれる
▼指数といえば世界の数学者を長年悩ませたフェルマーの最終定理が浮かぶ。3の2乗+4の2乗=5の2乗の関係は直角三角形の面積を求める三平方の定理で知られる。だが3の3乗+4の3乗=5の3乗にはならない。フェルマーはXのn乗+Yのn乗=Zのn乗の関係を満たす指数nに3以上の自然数はないとした
▼18世紀の天才オイラーはこれを拡張させ、Xの4乗+Yの4乗+Zの4乗=Wの4乗を成立させる自然数はないと予想した。長く正しいと考えられていたが1986年に数論とコンピューターで2682440の4乗+15365639の4乗+18796760の4乗=20615673の4乗であることが発見され、オイラーの予想は否定された
▼漢字圏の無量大数は10の68乗、宇宙にある原子の総数は10の80乗とも言われる。秋の夜長、数の織りなす世界が眠りを誘う。