朝晩は冷え込むようになった。ひんやりした空気を吸い込むと、鼻の奥の方がむずむずして「クシュン!」とか「ハクション!」と、やってしまうことがある。くしゃみは冷気や異物に対する反射のような行動とされる
▼「うわさされると出る」と言われることもある。昔の人はくしゃみが出るのは自分以外の何者かの力が働いていると考えたようだ。うわさも自分以外の誰かによる行為であり、両者が結びついて、くだんの俗説が生まれたという説が有力らしい
▼くしゃみの回数が意味することについての慣用句もある。「一誹(そし)り 二笑い 三惚(ほ)れ 四風邪」「一に褒められ、二に憎まれ、三に惚れられ、四に風邪ひく」などと言う。当たり前だが、繰り返すくしゃみは体調悪化のサインであるだろう
▼風邪はウイルスが引き起こす感染症ととらえれば、昔の人がくしゃみを何者かの仕業と考えたこともうなずける。ことしも、風邪やインフルエンザに気をつけねばならない季節がやってくる
▼新型ウイルス感染症の「第8波」の到来が懸念されている。全国的には感染者数が増加に転じたとの指摘もある。県内も前週の同じ曜日を上回る日がある。インフルエンザとの同時流行にも注意が必要だ
▼たわいないうわさ話の結果だとすれば、少々のくしゃみはご愛嬌(あいきょう)で済ますこともできるだろうか。しかし、体調の悪化を示す兆候ならば見逃せない。日常を取り戻す歩みを進めるためにも、厳しい冬に備えたい。まずは、くしゃみに注意しつつ。