楽しいイベントが一転して大惨事となった。あまりの犠牲者の多さに言葉を失う。

 なぜ事故が起きたのか。当局には原因の徹底究明と、きめ細かな支援が求められる。

 韓国の首都ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)の路地で29日夜、ハロウィーンを前に集まった若者らが折り重なるように倒れる事故が起きた。日本人を含む150人以上が死亡し、100人以上が負傷した。

 現場は幅3メートル前後の狭い坂道で、下に向かって次々と転倒した。消防当局は、多くが圧死したとみている。かけがえのない命が奪われたことに胸が痛む。

 現場付近はダンスクラブや飲食店が多くあり、国際色豊かな観光名所として知られる。最近では人気ドラマの舞台にもなっていた。

 この日は、営業時間などに関する新型コロナウイルス対策の規制が解除されて初めて迎えるハロウィーン前の週末だった。韓国メディアは、十数万人が集まっていたと推計する。

 事故を受け、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は現場を訪問し、事故収拾に最善を尽くすと表明した。

 政府や関係機関は犠牲者の遺族や負傷者支援に全力を挙げてもらいたい。どのような状況で事故が起きたのか詳細な調査も必要だ。

 救出された人は「いろいろな店から出てくる人で路地がいっぱいになり、押し合いのようになった」と証言する。

 狭い空間に極端な大人数が密集して「群衆雪崩」が起きた可能性が指摘されている。

 事故発生の危険性を警察や自治体が事前に把握できなかったかどうかも問われよう。

 ウイルス対策の規制が解除されれば、大勢の若者が人気の場所を訪れるのは容易に予想できる。現場の坂道は事故が発生する危険性も高かったのではないか。

 人の流れを一定限規制したり、雑踏警備の担当者を十分配置したりしていたかなど、警備態勢の検証が欠かせない。

 日本でも31日夜までハロウィーンを楽しむ人が昨年以上に各地の繁華街に集まるとみられる。

 東京・渋谷では昨年より警備態勢が増強された。韓国の事故後の30日夜は、大勢の警察官が万一の事態に備え警戒を強めていた。

 雑踏事故では、兵庫県明石市で2001年、花火大会の見物客が歩道橋上で転倒し、11人が死亡、247人が負傷した。

 警備計画が不十分で、「群衆雪崩」が起きたとされた。韓国の事故との類似がみられる。

 本県では1956年、弥彦神社の初詣で境内の群衆が折り重なって倒れ、124人が亡くなった「弥彦事件」を忘れてはならない。

 明石の事故を受けて各地では、人の誘導方法の徹底などの対策が取られた。足元の再発防止策を改めて確認したい。