夜明け前や日没後、空を横切る星のような光が見えることがある。流れ星よりはゆっくりした速度。航空機でないとしたら、人工衛星かもしれない。自ら光を発することはないが太陽の光が反射して、肉眼でもその姿を確認できることがある
▼気象観測や通信の需要が高まるにつれ打ち上げも増えている。経済産業省によると、2011年の世界の打ち上げ数は129機。21年は1809機で、10年で14倍にもなった。打ち上げビジネスは前途有望な分野だ。日本勢はイプシロンロケットがつまずいたが、早く態勢を立て直したい
▼衛星を英語にすると「サテライト」。都市部の企業が本拠地から離れた場所に遠隔勤務のために設置する施設を、衛星になぞらえてサテライトオフィスと呼ぶ。こちらも数を増やしている
▼総務省の調査では、全国の自治体が誘致に関わった設置数は21年度末時点で1348カ所。前年度と比べ1・5倍になった。本県は38カ所増の95カ所で、北海道の110カ所に次いで多い
▼新潟市や長岡市といった都市部のほか、佐渡市や湯沢町など自然豊かな地域にも設置されている。通信環境が整備され、仕事と充実した暮らしを両立できることが魅力らしい。地元企業にとっても新たなビジネスの窓口になるかもしれない
▼一方、自治体からは「早期の撤退が多く、定着が課題」という声もある。はやり物で終わらせたくない。本県が働きやすく、住みやすい場所だと発信する「衛星」が存在感を増すことを望みたい。