思わず空を見上げた。きのう朝、けたたましい音とともにスマートフォンに届いたメッセージの文面に「ミサイル発射」とあったからだ。相棒の老犬と散歩中だった
▼秋らしい、青く高い空が広がっていた。上空には何も見えず、不自然な音も聞こえない。それでも急ぎ足で自宅に戻ると、再びメッセージが届いた。「ミサイル通過」。またも頭上を兵器が飛行していったのか。そう思っていたが、程なく防衛省は「日本列島を越えず、日本海上空で消失した」と訂正した
▼首をひねった。消失したとはどういうことか。韓国からの報道は、ミサイルが飛行に失敗したという軍の見方を伝えていた。本県などの上空を飛び越える軌道の飛行が失敗したのだとすると、それはそれで背筋が寒くなる
▼予期せぬ失敗により、私たちの頭上に何かが落下してくる可能性も皆無ではないだろう。何らかの被害が生じる恐れもあるのではないか。ウクライナに隣接するモルドバでは、ウクライナに迎撃されたロシアのミサイルの残骸が落下し、被害が出たという
▼この原稿を書いている時点では実際に起きたことの詳細は判然としない。とはいえミサイルの発射はもとより、人が暮らす場所の近くに兵器を飛行させることの恐ろしさ、罪深さを思わずにはいられない
▼ミサイル発射を続ける北朝鮮に対し、韓国も強硬姿勢を加速させている。偶発的な衝突も懸念される。きのう見上げた空は幸いにも静かなままだった。兵器が飛び交う空にしてはならない。