子育てに王道はない。手探りを繰り返す毎日が、やがてわが家の子育てになっていく。いろいろなパパに話を聞き、それぞれが歩んできた「パパの細道」をのぞかせてもらう全5回の対談企画。第1回目のゲストは、吉本興業所属のお笑い芸人・いっすねー!山脇さん。まっすぐ突き進んだ一本道か、ワイルドに切り開かれた獣道か。今回はどんな細道が待っているだろうか。

横田孝優

コピーライター。9歳(男)・6歳(男)・6歳(女)の3児のパパ。企業や商品のブランディングやライティングなどを手がける他、新潟日報社発行のフリーペーパーasshにて「子に溺れる~長男+双子男女のエブリデイ~」を連載中。https://ztdn.net

いっすねー!山脇

吉本興業所属のお笑い芸人。春くん(5歳)と丸くん(1歳)の兄弟のパパ。2017年に東京から新潟市へ移住。テレビ番組出演や雑誌での執筆活動のほか、YouTubeチャンネル「やまわきくん家」で、子育て動画を配信している。

ママになった妻もすてき

横田 お子さんが産まれてから、奥さまとの関係性は変化がありましたか?

山脇 そうですね、会話がより盛り上がるようになったというか。「こういうことを言ったら、春がこう言い返してきて面白かった」とか、「丸が指さして指図するようになってきて、偉そうで面白い」とか、子どもの話をする奥さんもまたかわいいんですよね。ほれ直しちゃうというか。向こうはどう思ってるか知らないけど…(笑)。片思い中かもしれないです。

横田 いいですね。

山脇 ママになった奥さんもすてきだなと思うようになりましたね。

打ち解けてリラックスした様子の二人

怒り役になりきれない

横田 子育ての中で悩みや迷いはありますか?

山脇 「自由に育てたい」という気持ちがあるんですけど、僕の中で自由の範囲が広いんです。奥さんが「それは駄目だよ」と言うようなことでも、僕は許してしまう。悪いことをしたら駄目だけど、好奇心旺盛なので自由にさせたい気持ちもあって。今、奥さんが「駄目」をたくさん言う役割になっていて、申し訳ないなと思います。子どもは怒りん坊のママと思っているかもしれない。

横田 それはどんな場面ですか?

山脇 例えば、保育園帰りにスーパーに寄ってお菓子を買うじゃないですか。子どもは「食べていい?」と聞いてくる。夜ごはんもしっかり食べると言うので僕は許しちゃうんですけど、やっぱりおなかいっぱいでごはんが食べられなくなる。ママはそれでも食べなさいって言うけど、僕は残していいよって甘くしてしまうんですよね。…それは僕が悪いか。

横田 (大爆笑)

とにかく子どもがかわいい山脇さんだが、それだけでは良くないという自覚も。「子どもの自由をどのくらい許すかの基準は、ママとすり合わせていかなきゃいけないところ」と語る

山脇 完全に僕が悪いですね(笑)。横田さんは怒ったりします?

横田 怒りますけど、同じことで妻と一緒に怒らないとは決めています。最近は怒り役を譲っちゃうことも多いですね。そろそろ妻が怒りそうだなと思ったら、もう静観してしまう。例えば、子どもたちが約束の時間が過ぎているのにまだタブレットを続けている。一度声をかけてみるけど、反応がない。本人たちも時間を過ぎているのは分かっているし、聞こえないふりをしているだけ。悪いと自覚してやっているので、こちらが強く言うとけんかになっちゃうんですよね。ほっといたらそのうち妻が怒るのも分かっているので、もういいやって、つい放置しちゃいます。

山脇 一緒だ!奥さんが言ってましたけど、本当は怒りたくないんだと。怒るって、喜怒哀楽で一番エネルギーを使うと言っていました。怒った後に仲直りするまでも大変なんだと。確かにそれをママにばっかりやらせるのは申し訳ないですね。

結局、親の都合なのかも

横田 ちょっと話を戻しますけど、子どもの自由を尊重することと、駄目なことは駄目と教えることは、どっちを取るか難しい場面がありますよね。

山脇 難しいですね。子どもは、水たまりが好きじゃないですか。入りますよね(笑)。それを止めるか止めないかみたいなね。

一筋縄ではいかない育児の難しさを日々感じているという山脇さん

横田 あ~。

山脇 「行け行け!」っていうときもあるし、「駄目駄目!」みたいなときもあって。

横田 それもこっちの都合だったりしますよね。

山脇 そうなんです!

横田 着替えを持っているときならいいけど、忘れちゃったときは止めてしまう。

山脇 結局こっちの都合になっちゃう。

横田 後からすごく反省します。親の都合だな、みたいな。

任せっきりはやっぱりずるい

カプセルトイに目がない長男・春くん(5歳)。山脇さんの「頼むからあの機械を店の入り口に置かないで。お出かけがそこで終わっちゃう(笑)」という言葉に、横田さんも深くうなずいていた

横田 奥さんからクレームはないですか?「私ばっかり怒って!」という。

山脇 ありますあります! それに、この前シングルファーザーの友達が遊びに来たんですけど、「山脇それは駄目だよ」って言われました。「奥さんに全部任せちゃ駄目。ずるいよ」って。彼は一人で育てているから、全部自分でやるわけじゃないですか。車の中で「それで優しいパパになろうとしているのはずるいぞ」と言われました。そんなことも学びながら、親も子どもと一緒に成長していくんだと思います。まだ僕もパパとして5歳だし。1歳の子に対しては、まだ1歳のパパなんだなっていう。

横田 確かににそうですよね。子育ては教科書があるわけでもないから、叱り方は毎回反省しますし、子どもと同じだけこっちもへこんでたりしますよね。

山脇 パパとしては初めての経験ばかり。親も振り返りながら、「ああいう怒り方をしたけど、良かったのかな」とか悩んで、こっちも成長していくんですよね。子どもと共に。

わが子と向き合うことを通し、人間的にも成長できたという二人。手探りで進むそれぞれの細道には、今日も何かが待っている。

(終わり)