子育てに王道はない。手探りを繰り返す毎日が、やがてわが家の子育てになっていく。パパたちが歩んできた「パパの細道」をのぞかせてもらう対談企画。3rdシーズンのテーマは長いようで短い「子どもと過ごす時間」。今回はどんな細道が待っているだろうか。

横田 孝優
コピーライター。11歳・8歳の双子の3児のパパ。企業理念の開発やホームページの文章制作などを手がけるほか、新潟日報asshにて2024年1月まで子育てコラムを連載。 https://ztdn.net/

関 智晴さん
新潟県南魚沼市で米作りを行う「関農園」の代表取締役。「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」で世界一である金賞を6回受賞。元プロスノーボーダーという経歴も持つ。19歳・17歳・15歳・4歳の4人の子どもの父。

人生2周目のような

横田 最初のお子さんが生まれたことが、農業を本格的に仕事にするきっかけになったと伺ったのですが、お子さんが生まれる前後でご自身の時間の使い方に変化はありましたか?

 自分が20歳、妻が19歳の時に長女が生まれて、そこから2年おきに2人生まれたんです。子育てが始まったのが早かったんですが、もう終わりが見えてきて。妻ともそれが少し寂しいねと話していて、4人目が欲しいと思いました。

自分は家が好きであまり外出をしないので、生活自体はあまり変わらなかったですね。それよりも、家族がいることで居場所ができたという感じです。家族で何かをするのが好きなので、自分の居心地が良くなったという感覚です。

お子さん4人の写真。一緒に笑顔でピースをする下のお子さん2人と、後ろには長女・長男さんの姿も

横田 一緒に行ってみたいお店とかも家族と行けるので楽しくもあり、気が楽でもありますよね。

 そうですね。誰か一緒に行く人を探さなくていい、というのもありますね。

横田 末っ子が生まれて、久しぶりに小さい子を育てる中で、新しい発見や思い出したこと、または新鮮に感じることはありましたか?

 最初の3人の時は、結構大変でした。行けるお店が限られるなど、いろいろな問題もありました。

でも、その時間が終わってみると、大変だったけど、それが人生で一番いい時期だったなと感じます。子どもと一緒にいられる時間って、振り返るとすごく短いんですよね。今、長女は東京に行っているし、長男もカナダに留学しているし、そう考えるとあっという間だったなと。

だから、4人目が生まれてからは、大変だけど「これが一番幸せな時期なんだな」と噛み締めながら子育てをしていますね。

横田 人生2周目みたいな感覚なんですね。

 そうですね、そんな感覚です。

末っ子の次男くんと奥さまとお出かけ。十日町市にある大地の芸術祭の作品前で記念にパシャリ

人生は出会う人次第

横田 仕事よりも家族を優先するというマイルールを伺いましたが、何か教育方針にしていることはありますか?

 教育方針は、「ビッグになる」という感じですかね。自分自身を小さく捉えず、好きなことをしっかり見つけて、それを追求すれば大きくなれるんだよ、ということを伝えています。普通で終わらないように、という感じですね。

横田 お子さんの小さな可能性を見逃さずに、選択肢を伝えていく姿勢がすてきだなと感じました。

 自分もそうだったんですけど、人の成長は出会う人次第で180度変わることがありますよね。子どもたちにとって、そんな出会いを与えられる人間になりたいなと思っていて。

例えば、ちょっとした一言で大きく変わることってあるじゃないですか。長女も最初は「美術大学なんて絶対無理」って言ってましたけど、「いや、いけるでしょ」って背中を押して、可能性を信じて励ましていたら、自然と変わっていきました。子どもの可能性って、無限大なんですよね。それを心から信じて、言葉にして伝えることが大事だと思うんです。

横田 褒めることや肯定する声掛けは、よくされるんですか?

 たくさんしますね。でも、それが本当に良いのかどうかは、正直まだ試行錯誤中です。どう言えば、子どもがもっと深く追求して、好きなことにのめり込めるのか。そのためにいろいろな本を読んだり、人の話を聞いたりして学んでいますが、答えはなかなか見つからないですね。

横田 テレビで拝見した米作りについてのインタビューでも、同じようなことを話されていました(笑)。

 確かに(笑)。常により良い方法を探しながらやっています。4人子どもがいると、楽しさも増えますよね。兄弟が多ければ多いほど、家が賑やかで楽しいです。子どもがいてくれるだけで最高だなって。

家族の時間を大切にしたい

横田 逆に、「4人もいると大変だった」と思うことはありますか?

 いや、特に浮かばないですね(笑)。それよりも、子どもの成長を見守る中で自然と変わってきた部分もあります。例えば、長女の時は、答えを急いで教えたり、手助けしすぎたりしていたと思います。でも、自分で考える力が育たないって気付いて。

下の子たちの時は、「やりすぎない」「答えを教えすぎない」ように気を付けるようになりました。親として手を貸すのは必要だけど、やりすぎない。バランスが大事だと思うんです。

横田 奥さまとも、教育方針について話し合うんですか?

 しますよ。でも、そうすると「そっちがやりすぎなんだよ」ってけんかになることも(笑)。やりすぎずに見守ることをお互いに意識しながらやっています。

横田 今後についてですが、お子さんが成長していく中で、やってみたいことはありますか?

 長女は、デザインや建築に興味があるので、一緒にすてきなホテルや建築を見に行きたいですね。長男は料理に興味を持ち始めたので、世界の名レストランを訪れる旅を計画したいと思っています。

下の子たちとは、一緒にスポーツや新しい挑戦を楽しみたいです。全員がそろうのはだんだん難しくなるけれど、帰省のたびに旅行などを計画して、家族の時間を大切にしたいと思っています。

旅行先の京都で撮影した一枚。家族みんながそろった時は決まって一緒に旅行やお出かけに行くのが定番だという

横田 最後に、子育てに奮闘している読者の方々へメッセージをお願いします。

 子どもが小さいうちは大変なことが多いけど、大きくなるとどんどん離れていきます。その時に「もっと一緒に過ごしておけばよかった」と後悔しないように、今を大切にしてください。

家族との時間を最優先にすることで、自分も自然と良い仕事ができるようになりますよ。家庭が人生の土台で、仕事はその上に成り立つものです。

「大変」だけで終わらせず、「幸せ」をしっかり感じられる工夫をすることが大事だと思います。

(終わり)