子育てに王道はない。手探りを繰り返す毎日が、やがてわが家の子育てになっていく。パパたちが歩んできた「パパの細道」をのぞかせてもらう対談企画。3rdシーズンのテーマは長いようで短い「子どもと過ごす時間」。今回はどんな細道が待っているだろうか。

横田 孝優
コピーライター。11歳・8歳の双子の3児のパパ。企業理念の開発やホームページの文章制作などを手がけるほか、新潟日報asshにて2024年1月まで子育てコラムを連載。 https://ztdn.net/

田実 智幸さん
9歳・6歳・3歳の男の子のパパ。大学卒業後に10以上の国で仕事をした後、アルメニア人の妻と結婚。子どもが生まれたことをきっかけに、より良い子育て環境を求めて2019年に東京から阿賀町へ移住。

〈田実さんのある一日〉
朝、起きたら家族で朝食を食べて子どもたちの登園準備。子どもたちが出かけた後に出勤し、帰宅後は家族みんなと過ごせる時間。自由時間に一緒に遊んだり、お風呂や歯磨きなど身の回りのお世話を一通り済ませたら、今度は自分自身の自由時間。そして日付が変わる頃に就寝するというのが田実さんのよくある一日の過ごし方。
次の夏休みは、妻の祖国へ
横田 一日の中で、お子さんと一緒に過ごす時間はどのくらいありますか?
田実 平日はだいたい19時までには帰宅するので、寝るまでの3時間くらいは一緒に過ごしています。週末はほぼずっと一緒にいますね。
朝は慌ただしいですが、一緒に登校準備をしたり、朝ごはんを食べたりするので、30分から1時間くらいは一緒に過ごしています。私の仕事は時間調整が比較的自由なので、子どもが保育園や小学校に行くのを見送ってから出勤しています。
横田 週末はどのように過ごされていますか?
田実 土曜日は午前中に妻が英語教室を行っているので会場まで送迎します。午後は長男が隣町のスイミングスクールに通っているので家族みんなで行き、スイミングの間に買い物をすることが多いですね。
日曜日は大体どこかに出かけますね。夏は川や海に泳ぎに行きますし、冬は雪遊びやスキーに行きます。他の季節は博物館などに行きます。隣町や新潟市の博物館にも行きますし、遊園地に行くこともありますね。

「自然の中で伸び伸びと遊べるのが新潟県のいいところ。夏は毎日のように近くのきれいな川で遊んでいます」と田実さん
横田 お子さんたちは、博物館が好きなんですか?
田実 新潟県立自然科学館は、いろいろな展示があって楽しいみたいです。毎回発見があるようです。
横田 夏休みや冬休みなどの長期休みでは、普段と違う過ごし方をしますか?
田実 本当は長期の旅行にも行きたいと思っています。しかし末っ子がまだ3歳で、長時間や長距離の移動は難しいのが実際のところ。最近少しずつ遠出ができるようになってきたという感じです。
今年のお正月は、埼玉の私の実家まで車で帰省しました。片道4時間くらいかかりましたが無事に行けたので、少しずつ泊まりの旅行も増やせたらなと思っています。
今年の夏には妻の故郷であるアルメニアに1カ月くらい滞在できたらいいなと考えています。
横田 不勉強で申し訳ないのですが、アルメニアという国は、どのあたりにあるんですか?
田実 トルコの東にある国です。北はジョージア、東はアゼルバイジャン、南はイランに接しています。
横田 なるほど。アルメニアに行ったら、何をしたいと考えていますか?
田実 まず、妻の両親に子どもたちを会わせるのが一番大きな目的ですね。
横田 今まで会う機会がなかったんですか。
田実 そうなんです。新型ウイルス禍やロシアとウクライナの戦争の影響もあって、妻も6年ほど帰れていません。オンラインのビデオ通話はしているんですけど、やっぱり直接会いたい気持ちは強いですよね。妻も両親に会えなくて寂しいようですし、孫の顔も見せてあげたいですね。
地域活動でつながる、子育て仲間
横田 3人のお子さんと、一人ずつ過ごす時間はありますか?
田実 正直、難しいですね。3人一緒に過ごす時間がどうしても多くなります。三男も上の2人に負けじと一緒に遊びたがりますし、年齢差をあまり気にせず「自分も同じくらいだ」と思っているみたいで、積極的に関わろうとするんですよ。どこかに出かける時も「一緒に行きたい!」となるので、基本的には全員一緒に行動しています。
横田 子どもを3人連れてのお出かけは、かなりハードじゃないですか? それぞれがバラバラに動き回ったりして…。
田実 そうですね(笑)。大きなショッピングモールに行くと、毎回大変です。最近は長男がだいぶしっかりしてきたので、長男と次男をペアにして行動させています。三男は妻がしっかり見てくれるので、そうやってなんとかやりくりしていますね。
横田 お兄ちゃんは、弟くんの面倒をよく見るタイプなんですね。
田実 自然と、そういう責任感が生まれるのかもしれませんね。
横田 それは心強いですね。これからもっと頼もしくなっていきそうですね。奥さまと家事や育児の分担はどのようにされていますか?
田実 結婚前後で少し変わってしまった部分もあり、申し訳ないなと思うところもあるんですけど、基本的には妻が平日の炊事・洗濯・掃除をやってくれています。
週末には私も食事を作ったり、家具や家電の修理をしたり、地域行事やPTA活動を担当しています。
妻もだいぶ日本語が話せるようになってきたので、今後興味が出てきたら彼女にも少しずつPTA活動に挑戦してみてもらうのもいいかなと思っています。
横田 私もPTAの学年委員をやっているんですが、PTA活動はいろいろ大変ですよね。
田実 そうですよね。子どもがいると、少なくとも数回は何かしらの役割を担当することになります。来年度は小学校で学年委員の副委員長をやる予定です。
私は移住者なので、PTA活動を通じてパパ友やママ友ができるのはありがたいですね。
移住は、子どもがきっかけ
横田 時間の使い方について、お子さんが生まれる前と後で大きな変化はありましたか?
田実 私の場合、だいぶ極端かもしれません。もともと国際機関をはじめ、仕事を転々としていて、海外出張も多かったんですけど、結婚して子どもが生まれてからは、家族との時間を優先するようになりました。
以前は東京に住んでいて、通勤時間も長かったんです。でも、家族のことを考えて、通勤時間を短くしたい思いもあり、地方の阿賀町に移住しました。今では通勤時間が5分くらいなので、仕事以外の時間はほとんど家族と過ごせるようになりました。
横田 生活スタイルがガラリと変わったんですね。
田実 それも子育てをしっかりしたいという思いがあったからです。ライフステージごとに働き方を変えようと思い、今の生活にたどり着きました。
横田 地方移住も自然な流れだったという感じですか?
田実 そうですね。海外での生活では、その土地ごとに趣味を見つけて楽しんでいましたが、今は子どもたちに合わせた遊びをしています。例えば、虫捕りや魚捕りなど、自分の子ども時代以上に一緒に楽しんでいます。

虫捕りを楽しむ田実さん親子。「阿賀町には子どもたちが自然と触れ合って学べる機会がたくさんあります」と田実さんは語る
横田 子どもたちにとっても、一緒に遊んでくれるお父さんはすごくうれしい存在でしょうね。
田実 そうですね。遊びを通じて自然の面白さを教えたり、共に楽しむ姿を見せたりすることで、子どもたちにも良い影響を与えたいと思っています。
横田 子どもは、親のことを遊びの相棒みたいに思っている瞬間もありますよね。
田実 私も楽しんでいます。
(後編に続きます)