スーパーで新米コーナーが目立つ出来秋だ。コメ王国新潟のコシヒカリも、産地によって値段が違う。本格デビューから5年の新之助も捨てがたい

▼値上がりラッシュでうんざりする中、新米くらいは少しぜいたくしようか。炊きたてに焼きザケや野沢菜もいい。でもあえて、おにぎりで食べたい。そんな方もいるだろう

▼コンビニの棚には、三角や丸、のり巻き風の俵型など多彩な形が並ぶ。往時の遠足や運動会で食べたのは、こぶしのような球形。ノリに包まれ真っ黒で、具は正統派の梅干しや、タラの子だった。〈握り飯なぜか元気が出る形〉 (川村吐句郎) 。 ご飯を握る親の愛情が元気の源だったのか。売り場で勝手に郷愁に浸る

▼ほどよい粘り気のあるジャポニカ米だから、おにぎり文化が開花したという。その水稲も気候変動の影響が心配される。国連環境計画は温暖化対策が現状のままなら今世紀末には気温上昇が2・8度になると警鐘を鳴らす

▼本県の今年の作柄は平年並みというが、2019年はフェーン現象の猛暑に見舞われ、コシヒカリの1等米比率は25%に暴落した。暑さに強い新之助頼みだけでなく、品種改良など一層の対応が迫られる。おにぎりのお供であるノリの生産量も海水温上昇で過去最低水準が続く

▼皿もはしもいらず、災害時は炊き出しに大活躍する。おにぎりこそ、守るべき伝統の携行食ではなかろうか。〈にぎり飯機上で食べて稲を刈る〉 (山本浩) 。 ふる里ではこんな収穫の光景をずっと見たい。

朗読日報抄とは?