おとといは夜空を見上げた方も多いだろう。皆既月食のさなかに「惑星食」が起きる、約442年ぶりの天体ショーが観測できた。今回は天王星が月に隠れる「天王星食」だった

▼双眼鏡があれば月の影に隠れようとする天王星が見られると聞いたので、勇んで外に出た。地球の影に入った月が赤銅色に染まっている。月の左下辺りに天王星がわずかに見えるはずだが、わが家の小さな双眼鏡では見つけられなかった

▼火星や金星などは古代から知られていたが、天王星が発見されたのは比較的近年の1781年だ。天空をつかさどる神で、全宇宙を最初に統べた王ウラノスが名前の由来とされる

▼ウラノスは大地の女神ガイアから生まれ、そのガイアと結婚して多くの子をもうけたが、子どもたちを次々に地下の冥界へと押し込めてしまう。怒ったガイアは末っ子のクロノスに武器を与え、ウラノスを追放させた

▼天王星は太陽系では土星の外側に位置する。太陽との平均距離は土星のほぼ2倍で約29億キロもある。神話のように、ずいぶん遠くまで追いやられてしまったかのようだ。肉眼で観察できる、ぎりぎりの明るさだという

▼今の世では国を直接統治する王様はそういないが、最高権力者という点では大統領や首相がそれに当たるといえようか。神話の昔から権力の座とは危ういもの。英国ではトラス前首相が同国史上最短の在任50日で退いた。米国のバイデン大統領も中間選挙で厳しい戦いを強いられた。わが国の首相はどうだろう。

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