第1次世界大戦は1発の銃弾から始まった。1914年、現在のボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボでオーストリア皇太子夫妻が、セルビア系青年が放った凶弾に倒れた。この「サラエボ事件」が引き金となり世界を巻き込む大戦争に発展した
▼ウクライナに隣接するポーランドが、同国東部にロシア製のミサイルが着弾し犠牲者が出たと発表した。第一報に触れたとき、教科書にも載っている1世紀余り前の事件を思い起こして身構えた。1発のミサイルが大戦争につながりはしないか。そんな不安に駆られた
▼ポーランドは北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。同国への攻撃は全加盟国への攻撃とみなされ、反撃の対象となる。ただ米国のバイデン大統領は、軌道を考慮するとミサイルはロシアから発射された可能性は低いと指摘した
▼着弾したのはロシアからの攻撃に対するウクライナの迎撃ミサイルではないかとの見方が強まったが、この原稿を書いている時点で詳細はよく分からない。証拠を集め、真相を見極めねばならないだろう
▼間違いないのは、ロシアのウクライナ侵攻は、一歩間違えば他国を巻き込んでしまう危うさをはらむということだ。何らかの意図を込めた行為にせよ、想定外の事故にせよ、一つの出来事が取り返しのつかない事態を引き起こしかねないと改めて感じさせられた
▼今回の侵攻ではロシア側にも相当の死傷者が出ているらしい。誰も得をしない、こんな行為をいつまで続けようというのか。