紙を折りたたみ、鶴やかぶとなどの形を作る折り紙は日本で多様な技法が追求され、大きく発展を遂げた。この国独自のものと思っていたが、そうでもないらしい。19世紀前半に活躍したドイツの教育者フレーベルは、幼児向けの教材として折り紙を活用した
▼動植物などの造形だけでなく、美しい幾何学模様を描く折り紙で、子どもの能力を伸ばそうとした。日本でも、明治政府が幼稚園制度を設ける際にフレーベルの教育法が導入され、折り紙も活用された。教育分野の日独交流に、折り紙が一役買っていた
▼ドイツをはじめ、世界の強豪と日本が戦う今回のサッカーワールドカップ(W杯)で、わが国の代表が着用するユニホームのモチーフは折り紙だ。チームカラーの青地に、数多くの直線で表現した折り紙模様が描かれている
▼願いがかなうよう、祈りを込めて鶴を折ったことがある方も多いだろう。今大会のユニホームは「歓喜をもたらす祈りの象徴」として折り紙をモチーフに採用したという
▼日本代表の歴史は、悲願のW杯出場をあと一歩で逃した「ドーハの悲劇」があり、出場を果たした後も悲喜こもごもがあって、まさしく「山あり谷あり」だった。その歩みを「山折り谷折り」で作る折り紙に重ね合わせた側面もあるという
▼代表は今夜、優勝経験がある強豪ドイツとの初戦に臨む。日本の折り紙はその独創性で海外の人々を驚かせることも多い。折り紙を描いたユニホームをまとい、世界を驚かせる代表の姿が見たい。