〈さよならは別れの言葉じゃなくて再び逢(あ)うまでの遠い約束〉。薬師丸ひろ子さんの「セーラー服と機関銃」の一節である。この歌詞を見てメロディーが思い浮かぶのは50代以上の方だろうか
▼さよならを再会のための約束と捉えた歌詞が印象的だった。「ふたたび」という言葉に当てる漢字「再」の付く熟語を思い浮かべてみる。「再生」「再開」「再出発」「再起」「再建」「再発見」「再現」…。まず浮かんだのは、どことなく前向きな感が漂う言葉だった
▼しかし、あまり歓迎したくないものもある。病気の「再発」は、できれば避けたい。罪を重ねる「再犯」は刑が重くなる。ここしばらく紙面でよく見る、この言葉も気が重くなる。「再値上げ」だ
▼トマトケチャップ、冷凍食品、スナック菓子。外食産業でもギョーザやカレー、ドーナツ、ハンバーガーなどがそうだ。ただでさえ身の回りのさまざまな品の値段が上がったというのに、再度の値上げは家計に大きな打撃となる
▼電気料金もこれまでじわじわと上がってきたが、東北電力は大幅な値上げを国に申請した。ロシアのウクライナ侵攻などによる燃料価格の高騰を反映させるという。企業としても苦しいのは理解できないわけではない。それでもやはり、財布の中身がどんどん減っていくのは恐ろしい。日々の暮らしは危機のただ中にある
▼「ふたたび」は「二度」と書くこともある。値上げのラッシュも「二度あることは三度ある」とならないことを切に願うばかりだ。