「寛大な処分をお願いします」といえば、一定の事情を考慮した上で刑罰や処罰の軽減を求めることだ。刑事事件の裁判で、被告側が情状酌量を求める際などに使われる。被告人に同情した関係者から、寛大な処分を求める嘆願書が裁判所に提出されることもある

▼警察が書類送検する際には「寛大処分」を求める意見を付けることがある。既に社会的制裁を受けたなどの事情を踏まえて、実質的に刑事処分を求めないことだ。「寛大」は、司法の世界では比較的よくお目にかかる言葉のようだ

▼「リーニエンシー」は「寛大さ」を意味する英語だが、この名前で呼ばれるのが課徴金減免制度である。企業が談合やカルテルを公正取引委員会に自主申告した場合、課徴金の全額免除や減免を受けられる仕組みだ。一種の司法取引といえるだろうか

▼東京五輪・パラリンピック本番前に実施されたテスト大会関連事業を巡る入札の談合疑惑では、落札企業の一つで、広告大手の旧アサツーディ・ケイ(ADK)側がこの制度に基づいて自主申告していたことが先ごろ分かった

▼今回の疑惑を巡っては、事業を落札した広告大手の電通などが独禁法違反(不当な取引制限)の疑いを持たれている。大会を陰に陽に取り仕切った電通に関係者が依存していたことが「不正の温床」になった可能性も指摘される

▼スポーツの祭典で、汚職事件に続き発覚した不祥事だ。談合が事実なら、関わった人物や企業の多くは「寛大な処分」で済まされそうにない。

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