離島や中山間地、どこで生活していても、必要な荷物を届けてもらえるのは、安心だ。災害時にはそれが命綱にもなる。各地で行われている小型無人機ドローンを使った配送実験には、人口減が進む中で地域を維持しようとする人々の熱い期待を感じる
▼奄美大島では、大型ドローンが食料や医薬品など約10キロの荷物を取り付け、直線距離で15キロ以上離れた島への配送に成功したという。フェリーで約1時間半かかるところを、20分で到着した。空を見上げる人々の笑顔が目に浮かぶようだ
▼その素晴らしい技術が、恐ろしい使われ方をしていることに戦慄(せんりつ)する。ウクライナで爆弾を積んだ自爆用ドローンによる攻撃が続いている。発電所や民間インフラを破壊し、都市部に打撃を与えている
▼地上戦で成果を出せなくなったロシアが、心理的な恐怖を狙って攻撃しているとの分析がある。イランがロシアへの供与を認めたばかりか、ロシア国内での生産に向かう動きもあるという
▼突然、頭上に現れた無人の機体に狙われる恐怖は、想像を絶する。ドローン技術は軍事利用を目的に生まれたとはいえ、目的通りに使ったことで、戦争は大きく変わった。なぜ武器として使ってしまったのか
▼昨年開かれた東京五輪の開会式では、ドローンのパフォーマンスがあった。制御された1800機もの機体が、夜空に青く輝く美しい地球を描き出し、見上げる私たちを感動させた。技術は良くも悪くも使い方一つ。人々の幸福のために使われなくては。