きょうから師走。新年を迎える準備が慌ただしくなる季節だ。年越しの食卓に上る「年取り魚」は東日本はサケ、西日本はブリとされ、本県はその境界に位置する。多くはサケのようだが、佐渡や糸魚川などブリの地域もある。家庭ごとの違いもあるかもしれない
▼年取り魚として扱うかはともかく、寒ブリは新潟の味覚の代表格だ。佐渡をはじめ本県沖の漁獲が気にかかる。寒ブリ漁が盛んなお隣富山県では近年の漁獲が減少傾向なのに対し、北海道沿岸など全国的には水揚げが増えている
▼「イカの街」として知られる北海道函館市は名物スルメイカの漁獲が大幅に減り、ブリが多く揚がるようになった。食べ慣れないブリの消費拡大に向けて、さまざまなメニューを考案して新たな特産品にしようとする動きが広がっているという
▼函館近海のブリは味があっさりしているとされる。冬の日本海に回遊してくるものは脂が乗り、なおかつ身が締まっているので、やっぱりブリは本県産で、と言いたくなるのは新潟県民のひいき目か
▼海水温の上昇といった気候変動で、ブリをはじめ多くの水産物の漁獲量に影響が出ているらしい。本県では暖かい海にすむサワラの漁獲が増えた。一方で海藻が消失する「磯焼け」が発生し、ホンダワラ類に負の影響が出るようになった
▼環境の変化に合わせて、新顔の産物で食文化を育てることも必要だろう。とはいえ、伝統の文化が衰退するのはやるせない。この冬も地元の味覚にありつけますように。