雪や霜の季節である。新潟市中央区で「初霜」が観測された先月28日の早朝は道ばたの雑草がびっしりと霜に覆われていた。見慣れた風景が白く染まり美しい。同時に寒さを感じ首をすくめた

▼霜は地面や植物などに付着する氷の結晶だ。放射冷却などで地表の温度が下がると空気中の水蒸気が昇華してできる。よく「霜が降りる」と言うが、雪と違って上から降ってくるわけではない。霜を生み出すのは大気の下の方、すなわち足元の空気が冷えた時だ

▼中国では「上」から降ってくるものに反発が広がった。上意下達の「ゼロコロナ」政策に反対する抗議行動が各地で展開された。共産党政権は厳しい行動制限による感染封じ込めの成果を誇示してきたが、経済の停滞などで市民から不満が噴出した

▼トップダウンでの政策遂行は効率のいい面もある。急速な経済発展も、そうした政治手法のたまものかもしれない。ただ、いったん走りだすと軌道修正が難しい。習近平指導部が独裁色を強める中では、なおさらだろう

▼中央政府は感染対策の一部を緩和する方針を打ち出した。それでも、地方自治体には感染拡大を許せば中央から責任を追及されるとの恐怖がまん延しており、逆に規制が強化された側面もあったという

▼政権批判は厳しい取り締まりの対象になっているようだ。上意下達を徹底しようとする政府に対し、市民の視線は相当冷え込んだのではないか。足元の内政に大きな問題を抱えた大国が今後どう動くのか。気がかりだ。

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