中国の厳格な「ゼロコロナ」政策に対して広がった抗議デモで、参加者が掲げたのは一片の白い紙だった。政権批判のスローガンなどは書かれていなかった
▼だから、治安当局も正面切って言いがかりをつけにくい。政権批判に厳しく目を光らせるかの国にあって、大衆が考え出した知恵なのだろう。真っ白な紙の裏側にどんな圧政があるのか。世界の人々は思いを巡らす
▼「ホワイトウォッシング」という英語がある。安価な白い塗料で、薄汚れた壁を洗ったかのように簡単に真っ白にしてしまうことだ。転じてうわべを飾り、ごまかすことを指す。犯罪や不正情報を覆い隠す検閲の意味もある。中国の白い紙は、これを皮肉った抗議でもあるのか
▼「ホワイトウォッシング」から派生した言葉「スポーツウォッシング」も注目されている。フェアプレーや友愛などスポーツの爽やかなイメージを借り、大会開催国などが自国の政治弾圧や隠蔽(いんぺい)体質などの悪いイメージを覆い隠すという意味だ
▼サッカーのワールドカップが熱を帯びる。開催国カタールでは、大会準備の過酷な労働で多くの出稼ぎ労働者が亡くなったという。性的少数者への差別も批判されている。差別反対を訴えようとした選手らに対し、国際サッカー連盟は処分対象になると通達した。開催国から圧力があったとも指摘される
▼東京五輪・パラリンピックを巡っては、汚職に続いて談合事件の捜査が続く。染み付いた汚点は、少々の洗濯では、とても白くなりそうにない。