胸の内をさらけ出すことは、それほど簡単なことではない。つらい記憶と結びついていれば、なおのこと。だから感心した。法務省などが主催した今年の中学生人権作文コンテストの新潟大会入賞作には、りんとした主張が目に付いた
▼自分の障害や不得意なところもオープンにしようというメッセージが印象深かった。葛藤の末にたどり着いた境地であることに意味がある。周囲の無理解や自分の中の弱さと正面から向き合い、正論を振りかざしたりもしない
▼吃音(きつおん)に悩み人前で話すことに恐怖を抱いていた胎内市の生徒は気持ちの変遷をつづった。「苦手なことは誰かに分かってもらえばいい。伝えることは恥ずかしいことではない」。学年委員に立候補し、全校を前にした発表にも挑戦していく過程がすがすがしい
▼生まれつき片耳の聴力がない上越市の生徒は、聞こえないことを自分から周囲に伝えるよう心がけることで、失意の底からはい上がった。聴覚障害を受け入れながら「ありのまま話すことで悩みを分かち合える」と前を向く
▼当事者ではなく、取り巻く側の視点で「障害を隠すのではなく、周りに堂々と協力を求める声が増えてほしい」と訴えたのは、佐渡市の生徒だった。隠すことで助長されてしまう偏見もあるとつづった
▼知ったかぶりの忖度(そんたく)が、時に偏見や差別的な意識に根付いていることもある。まずは知ること、知ってもらうことが大切だと、実体験から導き出した中学生の合理的でしなやかな感性に拍手する。