移り変わる事態へ臨機応変に対応していると評価するのか、結論ありきの現状追認と見るか。それぞれの立ち位置によって捉え方は異なるかもしれない。新型ウイルスへの対応だ

▼当初は未知のウイルスを恐れて感染者数の増加におびえていた。県が2020年に設けた独自の警戒基準では特別警報発令の指標が「週556人以上」の新規感染者だった。ここ数日、感染者が1日3千人を超える現状からすると、隔世の感を覚える

▼国が21年に定めた新しい指標は「医療の逼迫(ひっぱく)」だ。感染者数よりも病床使用率などを重視し、社会経済活動を回そうとする。前述の独自基準を廃止した県は今月2日、新基準を設けた。病床使用率や発熱外来患者数などを踏まえ、4段階の警戒レベルを「総合的に判断」する。深刻度が上から2番目のレベル3では大人数の飲食や大規模イベント参加の自粛要請などを検討する

▼基準を導入した2日の病床使用率は約60%でレベル3相当だったが、一段下のレベル2とした。自粛要請を避けた格好だ。年末年始の書き入れ時を控えた関係者は県の判断を歓迎するだろう

▼一方で医療従事者の危機感は強いようだ。専用病床がほぼ埋まる病院もあり、職員の負担は大きい。院内感染を防ぐため、職員の孤食を徹底し、マイカーで食事をしてもらう施設もある

▼今や経済と感染対策の両立は当然のことになった。ただ、一部の人に過度な負担がのしかかるようでは立ちゆかなくなる。その点を忘れず、今冬に備えたい。

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