2カ月余りの間に、3人の閣僚が次々と更迭される異例の臨時国会となった。

 岸田文雄首相は閣僚に説明責任を果たすよう求め続けるばかりで、対応は後手に回った。首相の判断が国会審議を停滞させ、混乱を広げたことは否めない。

 10日閉幕した臨時国会は、閣僚を巡る疑惑の追及に終始した。

 開会して1カ月もたたずに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡り、山際大志郎前経済再生担当相が辞任した。

 死刑についての軽々しい発言が批判された葉梨康弘前法相、政治資金問題が続いた寺田稔前総務相も相次いで閣僚の職を辞した。

 首相はそれぞれに十分な説明を促したが納得できるものはなく、首相の指導力に疑問を残した。

 秋葉賢也復興相も旧統一教会や衆院選を巡る疑惑を追及され続けたが、答弁は的を射ない。

 旧統一教会問題や防衛予算など課題が山積する中で、土日祝日に国会を開かない慣習を破ってまで日程通りに閉会したのは、これ以上の「辞任ドミノ」を避けたい政権の思惑もあったに違いない。

 一方で政府は会期中、国の根幹に関わる政策を大転換する方針に相次いで道を付けた。

 与党の自民、公明両党は防衛政策で反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に合意した。

 政府は反撃能力保有を、今月中旬に閣議決定する国家安全保障戦略など安保関連3文書に明記する方針だが、憲法に基づく専守防衛の形骸化を招きかねない。

 防衛費増で首相は、財源確保策として年1兆円強を賄う増税の検討を与党に指示した。

 エネルギー政策では、廃炉が決まった原発の次世代型原発への建て替えや、60年を超える運転延長を可能にする原発活用に向けた行動指針を示した。

 東京電力福島第1原発事故以降の政策を大きく転換し、原発回帰に踏み込むものだ。

 いずれも首相の意向が働き、急展開した印象が拭えない。財源や安全性など、見合う議論が尽くされていないことに懸念を抱く。

 中国、ロシア、北朝鮮といった近隣諸国の軍事的な緊張や、世界的なエネルギー不安を背景に、国民の理解や合意が伴わないまま、政府の方針ありきで拙速に押し進めては禍根を残しかねない。

 野党は今国会で閣僚の資質を巡る問題に力点を置いた。

 旧統一教会問題の被害者救済法に関しては、立憲民主党と日本維新の会が共闘し、異例の与野党協議に持ち込んだ。

 スピード成立にこぎつけた一方、法律は生煮えで実効性に課題がある。議論の継続が不可欠だ。

 野党にはさらに多くを求めたい。安全保障問題をはじめ国家の行方を問う重要課題にこそ、全力で当たらねばならない。