濃紺を基調とした制服姿は今冬も変わらない。傍らには大きな鍋が三脚につるされている。年末恒例となっている街頭募金活動「社会鍋」である
▼キリスト教団体の「救世軍」が世界で善意を募る。1894年、失業者やその家族の救済のため米国サンフランシスコで始まったクリスマスケトルがルーツだ。日本では明治期に救世軍を創設した山室軍平が普及に力を尽くした
▼新潟市中央区の古町十字路では1927年に始まった。集まったお金で生活用品を買い、貧困世帯や1人暮らしのお年寄りに届ける。新潟大火や新潟地震、中越地震の被災者にも物資が配られた
▼俳句の季語にもなっている師走の風物詩だが、近年は影が薄い。古町の活気は失われ、メンバーの高齢化も進む。集まるお金も全盛期の3割ほどにとどまっている。「救世軍はどんな団体ですか」と聞かれることも一再ならずあるという
▼長年にわたり呼びかけの必需品だったマイクやラッパは規制が厳しくなり、古町では3年ほど前から使えなくなった。肉声の訴えには限界がある。このためオンライン社会鍋と銘打って、ホームページでの寄付も受け付けている
▼今年の支援先には新たにウクライナが加わった。今この時もロシアの砲弾におびえながら酷寒に耐える人々がいる。「助けを求める声がある限り救いの手を差し伸べたい」。60年近く街角に立つ中川八重子さん(73)は話す。さまざまな困難に直面する人の心を温める取り組みは、暮れも押し詰まるまで続く。