お国自慢はほどほどが肝心だ。地元の話題を取り上げる機会が多い小欄などは慎まねばと、心しているつもりではいる。でも今年を振り返ると、越佐の魅力を二つ再認識した。恐縮しつつ、書きたくなる

▼一つは「ラーメン王国」だ。春先、都道府県庁所在地と政令市を対象にした昨年の総務省家計調査が発表された。「中華そば」の世帯支出額で、新潟市が8年連続日本一だった山形市を抜き、トップに立った

▼その筋では知られた「新潟5大ラーメン」といった看板もあり、全国的にもファンは多い。先日、山形市が官民一体で日本一奪還活動を展開していると知り、何ともこそばゆい気分になった

▼二つ目は錦鯉。発祥地は長岡市山古志地域から小千谷市にまたがる山あいとされる。棚田の用水池で鯉が飼われ、住民の栄養源だった。江戸中期に突然変異で色付きの鯉が生まれる

▼人々は珍しい鯉を掛け合わせ、鮮やかさを自慢し合ったようだ。闘牛と同じく豪雪地の数少ない楽しみであり、生き物との共存の姿だった。それが今や本県の錦鯉輸出額は27億円、全国の半分を占める産業に成長した

▼政府は今月、錦鯉を輸出重点品目に決定し「国魚」指定の機運も高まる。第1回世界錦鯉サミットが11月に新潟市で開かれ、21カ国の参加者で盛り上がった。サミット「新潟宣言」は、こんなふうにうたう。「泳ぐ宝石」と称され、縄張りを持たず争いを好まない「平和の象徴」でもある-。そう聞くと、お国自慢の種がまた増えてしまう。

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