ことしは為替市場にとって歴史的な年だった。円安が加速し、10月には一時1ドル=150円台を付けた。バブル景気終盤の1990年8月以来の水準だった。年初からの下げ幅はおよそ35円に及んだ
▼ドルに対する円の価値は、東日本大震災後の2011年10月に付けた戦後最高値の1ドル=75円32銭と比べると、この10年余でほぼ半分になった。その後は政府の為替介入や、日銀が大規模な金融緩和策の一部修正を決めたことなどから円高が進んだ。何とも落ち着きのない1年だった
▼円相場は海外と取引がある企業の業績に直結するほか、輸入品をはじめ、身の回りの品の値段を大きく左右する。円安の進行による食料品などの値上がりは今も続いている。相場の急激な変動は経済や暮らしに強い負荷がかかる
▼何かにつけて、急な変化は影響が大きい。私たちの体も、突然の環境の変化についていけなくなることがある。急激な寒暖差により健康被害が起きる「ヒートショック」は典型例だ
▼冬場に暖かな部屋から寒い風呂場などに行くと、血管が縮まり血圧が上昇する。その後熱い湯に入ると血管が広がり今度は血圧が降下する。この急な変動が失神や脳梗塞、心筋梗塞につながる。除雪などで屋外に出た際も起こり得る
▼昨年、ヒートショックを含め、浴槽内で死亡した高齢者は交通事故死の2倍にもなったという。風呂場を暖めるなどして温度差を和らげることが対策になる。きょうから再び寒波に見舞われる恐れがある。心したい。