おでんに入れる具といえば? 大根それから卵だろうか。人気者である卵の値段が上がった。長らく「物価の優等生」と言われてきたが、1年前に比べると3割ぐらい高いとの相場データがある
▼鳥インフルエンザの影響がある。さらに鶏の餌となる飼料の高騰も痛手になっている。多くを輸入に頼る飼料は価格が2倍になったとの話もある。段ボールなどの資材費や運送費も上がったそうで、優等生を取り巻く厳しさが伝わってくる
▼日本政策金融公庫がまとめた冊子には、そうした生産現場の悲嘆が載っている。牧場も困っているという。飼料代だけでなく、高い電気代も重荷。畜舎に多く設置した扇風機を止めるわけにはいかないのに。60万円だった1カ月の電気代が85万円を超えたとの例が紹介されている
▼牛乳メーカーも仕入れ値が上がって苦しい。容器となる紙パックの値段も、工場のタンクを洗う洗剤の価格も上がってしまった。ハウス栽培をする農家も苦境にある。ハウスを暖めるための重油が急騰。キュウリを育てる生産者によると、年300万円だった燃料費が550万になりそうだ
▼どこも手をこまねいているわけではない。鶏ふんを堆肥にして韓国に輸出してみたり、暖房費のかからない夏だけの生産を試みてみたり。ピンチの中でひと筋の光をたぐる
▼値上げなどしたくない。優等生でいられるなら、いたいはず。でも限界がある。卵や牛乳、野菜を手に取るとき、高騰の波をかぶる生産者の苦しみに目を向けたい。