子育てに王道はない。手探りを繰り返す毎日が、やがてわが家の子育てになっていく。いろいろなパパに話を聞き、それぞれが歩んできた「パパの細道」をのぞかせてもらう全5回の対談企画。第3回目のゲストは、東北電力の山田さんと郡司さん。まっすぐ突き進んだ一本道か、ワイルドに切り開かれた獣道か。今回はどんな細道が待っているだろうか。

横田孝優
コピーライター。9歳(男)・6歳(男)・6歳(女)の3児のパパ。企業や商品のブランディングやライティングなどを手がける他、新潟日報社発行のフリーペーパーasshにて「子に溺れる~長男+双子男女のエブリデイ~」を連載中。https://ztdn.net/

山田正幸さん
東北電力株式会社上越火力発電所 発電技術グループ 発電主任。専業主婦の妻と長男(4歳)と3人暮らし。交代勤務で不定休の仕事のため、土日の連休は1カ月に1回程度。新型ウイルス流行の影響で家族と遠出のお出掛けがあまりできていないのが最近の悩み。

郡司祐也さん
東北電力株式会社上越火力発電所建設所 発電技術課。3人の子ども(りくくん10歳・あかりちゃん7歳・けいくん4歳)のパパ。3年半前から上越市に単身赴任中。新潟市で暮らす家族とは週末のみ一緒に過ごす。年の離れた弟がいることもあり、パパになる前から自他共に認める子ども好き。

平日イベントに出られない悩み

横田 仕事と子育ての両立をする上で悩むことはありますか?

山田 悩みというほどの悩みではないんですけど、子どもと自分の休みが合わないのが一番制約を受けているところですね。1日かけての外出は難しいので、近所を散歩したり、子どもが興味を持っていることを家の中で一緒にやったりして過ごします。できる範囲で子どもの成長につながりそうなことをやっています。

郡司 私はやっぱり週の真ん中に休みを取るのが難しく、学校や幼稚園の行事に参加できないことです。入学式や卒業式、授業参観は火曜日や木曜日にあることが多くて。娘の幼稚園の卒園式は出席できなかったんです。入学式はさすがに行きたくて、先輩や同僚に話をして休みを取りました。

横田 そうか、行事は週末だけじゃないですもんね。運動会は週末が多いですが、参観日は違いますもんね。入学式、卒業式は大きなイベントですし、切ないですね。

郡司 出席できなかったイベントは、妻から動画を送ってもらい見ています。

横田 僕は長男の卒園式に出られなかったんですよ。新型ウイルス流行が始まった年だったんですけど、その影響で各家庭から式の参加者は1人と制限が付き、妻が出席しました。それは結構悲しかったです。

山田 私の妻は専業主婦なので、子どもを見ている時間が必然的に長くなります。土日も私が仕事のときは、妻が日中の大部分を子どもと過ごすので、ストレスを感じている部分はあるようです。だから、子どもと自分の休みが合ったときは、3人で出掛けることも考えるんですけど、子どもと2人だけで出掛けることも結構多いですね。妻を一人にしてあげられるように。

横田 必然的にワンオペの時間が長くなるから、そうすると奥さんはなかなか一人の時間が取れないですもんね。

ゴーカートの助手席でドライバー気分を味わう長男くん。お父さんと遊べてうれしそう

子どもを思って選んだ、単身赴任

郡司 私が担当した仕事は、先月2022年12月に営業運転を開始した上越火力発電所の建設。このように新しく火力発電所を建設する仕事はめったにないチャンスだったので、ぜひ関わりたいと自ら希望しました。それが3年半前で、ちょうど家を建て始めようと計画していたときだったのですが、妻も理解してくれました。当時の上司は「子どももまだ小さいし、小学生くらいまでは家族一緒に暮らした方が良いんじゃないか」とも言ってくれたのですが…。妻と何度も話をして、子どもたちが転校や転園で友達と離れ離れになることがないようにしたいという理由で、単身赴任を決めました。

横田 単身赴任が決まってから家を建てたということですか?

郡司 そうです。家の建て始め、工事が始まるぐらいのタイミングで転勤が決まりまして。

横田 何というタイミング。

郡司 自宅の完成はその半年後。当時はまだ社宅暮らしでした。ちょうど長男が小学校に上がったタイミングだったので、「せっかく友達ができたから転校させたくないね」と話し合ったんです。

横田 郡司さん自身もどうしてもやりたい仕事だったから、家族にも納得してもらって単身赴任を選んだんですね。

昨年8月に小学校の花火大会に参加した際の一枚。ペットボトルで作った手作りランタンの中、あかりちゃんとけいくんは楽しげにピース

家族への感謝と、誇れる仕事

横田 お子さんができる前と後で、自分自身に変化はありましたか? また、それを踏まえてどんな子育てを他の方に勧めたいですか?

山田 自分自身の変化は、やっぱり時間の使い方。今はもう家にいる時間の95%ぐらいを子どもに使っているような感覚です。一緒に遊んでいるときは楽しいなあって思いますし、子どもを持つ前とは違う時間の楽しみ方ができるようになったのかなと思います。子どもの笑顔や寝顔を見ると、これまでに感じたことのなかったやすらぎのようなものも感じるようになりました。交代勤務という働き方は、大変なところもありますが、私は仕事に対して誇りを持って取り組んでいます。電気を作る仕事ほど、たくさんのお客さまに関わる仕事はなかなかありません。皆さんの生活に欠かせない、責任のある、自分の子どもにも誇れる仕事だと感じています。

横田 郡司さんはいかがですか?

郡司 単身赴任になり、妻をはじめ、周りの人のありがたみを以前よりも感じるようになりました。例えば子どもや妻が体調を崩したときに、近くに住む妻の母がヘルプに来てくれることとか。単身赴任の分、妻に負担をかけている部分はあると思います。ただ、今回携わることができた世界最高水準の熱効率を有する火力発電所の建設という仕事は、希望してもなかなかできるものではありません。上司の推薦や家族の支えがあったからこそ関わることができた仕事です。そのことには大変誇りを持って取り組んでいます。

横田 家族の理解と支えがあるからこそ、お二人は誇りを持てる仕事ができているんですね。

郡司さんと山田さんが勤務する上越火力発電所(2022年12月営業運転開始)。世界最高水準の熱効率を実現し、地域から愛着と誇りを持ってもらえるような発電所を目指す

(終わり)