もう初夢はご覧になっただろうか。現在の村上市の辺りには初夢にまつわる、こんな民話が伝わる。天から福を授かる初夢を見た、正直な若者が主人公である

▼やぶの中でくわ仕事をしていると、土の中から金がめが出てきた。しかし若者は、自分には天から福が授かるのだからと金がめを拾いもせず帰った。周囲の若い衆がそれを聞き、探しに行ったが金がめは見つからず、あったのは蜂の巣だった

▼若い衆は怒って、くだんの若者宅の窓に蜂の巣を投げ込んだ。すると蜂の巣は金がめに変わり、中から大判小判が飛び出した。若者は天から福が降ってきたと大いに喜んだ(水澤謙一編「越後の民話第一集」)

▼この民話が伝えようとしたものは何だろう。いろいろ考えられそうだが、信じ抜くことの大切さもその一つではないか。若者は夢のお告げを信じ、それを貫いたことで福を手にした。いろいろな困難に直面しても、自分が信じた道を行くことは尊い

▼この世には、信じたばかりに痛い目を見ることも少なからずある。一向に減らないオレオレ詐欺の類いがそうだ。うそや偽りを見抜く眼力は必要だろう。その上で、十分に検討して信じるに至った事柄なら、最後までつき合いたい

▼ウクライナの戦火をはじめ、世界を覆う黒い雲は分厚いが、いつかは晴れると信じたい。そのために、できることを探して動きたい。簡単ではない。時間がかかるかもしれない。それでも年初、物事は信じることから始まるのだと自分に言い聞かせる。

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