〈三日坊主仕事始めに照れ隠し〉井部時雄。新年の目標を初詣で誓った人も、賀状や書き初めに書いた人も、きょうあたりが試練の日である
▼ダイエット、整理整頓、日記…。石のように堅かったはずの誓約も、三が日のおとそ気分に紛れて忘れかけている人もいよう
▼仕事始めは3年続きのマスク姿だ。「明けましておめでとう」。言祝(ことほ)げど、素顔でないと、やはりさみしい。社長や上司の多くは、東欧での戦火や物価高、深刻化する気候変動などを訓示に取り上げ、不透明な景気の先行きを切々と訴えるだろう
▼こんな時こそ初心を忘れず、足元を見つめよう。石の上にも3年だ-。定型のような地味な励ましもいい。仕事始めに隠れているが、1月4日は語呂合わせで「石の日」でもある。石は神様が寄りつくとされ、お地蔵やこま犬などに触ると縁起がいいともいう
▼思えば太古の昔、人類が初めて作った道具は石でできていた。狩りにも食事の準備にも石器は欠かせなかった。大げさに言えば、人類最初の仕事始めは石と共にあった。ヒスイの文化が生まれたのは本県とされる。2カ月前の昨年11月4日、本県はヒスイを「県の石」に指定した
▼ことしは「一石二鳥」とばかりに要領よく飛躍を目指すか。それとも「二兎(にと)を追う者は一兎(いっと)をも得ず」と心得て「石橋をたたいて渡る」用心を優先するか。三日坊主を逃れるコツは、自分に期待しすぎないことと聞く。深くうなずき、一つ誓おう。マスクの下の笑顔くらいは毎日忘れまい。