山沿いは年明けから降雪が続いた。除雪のご苦労を推し量りつつ、暮れに海岸平野部で大雪になったことを思い出した。慣れない除雪に途方に暮れた。雪の捨て場がない

▼みだりに路上に捨てるのは御法度だ。人や車の通行の妨げになる行為は法律などで禁じられている。場合によっては罰則の対象になる。自宅の敷地など、よそ様の迷惑にならない場所に積むしかないのか。しかし、積み上げた雪の山がある程度の高さになると、作業する体が悲鳴を上げる

▼そんな時は、雪を処理する設備がある地域がうらやましくなる。消雪パイプに加え、水の流れで雪を押し流してくれる流雪溝が威力を発揮する。魚沼地域で勤務していたころの記憶がよみがえる。流雪溝には本当にお世話になった

▼スノーダンプに乗せた雪を水の流れにするりと落とすと、あっという間に流れ去る。雪を積み上げる必要がないから、作業はかなり楽になる。ただ、万能ではない。万が一、足を滑らせて落下すれば命が危うい

▼押し流す能力を超えて雪を投入すれば、詰まってしまう恐れがある。よその地域に水が行き渡らなくなることもある。それを防ぐため、作業の時間や水を流す量を話し合って調整する。雪国での暮らしの中で教わった

▼譲り合いの精神や他人を思いやる心があってこそ、うまく機能する設備といえる。魚沼で出会った中には、近所の除雪を手助けする人も多くいた。ぎすぎすした世の中で、何かを忘れていませんか。降る雪が問いかけてくる。

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