日本の女性の平均寿命が傘寿の80歳に達し、長寿世界一と胸を張ったのは1984年だ。宅配便やレンタルビデオの利用が急増し、エリマキトカゲが人気になった。「人生80年」という言葉が当時の厚生白書に登場、人々は将来の夢を膨らませた時代だ
▼40年近くたった今、平均寿命は女性が87歳、男性が81歳を超え「人生100年時代」と言われる。めでたいはずなのに、給料は増えず社会保障も頼りない。それで老後の夢なんて。こんな心持ちの方は多いだろう
▼このところ生命に関わる「80」という数字が目につく。昨年、世界人口が80億人を超えたと国連が発表した。19世紀初めの人口がやっと10億人だから、200年余りで8倍に膨らんだ。人類の繁栄と言いたいが、飢えに苦しむ人は8億人に上り、貧富の格差は拡大の一途だ
▼国内では昨年末、同年の出生数が初めて80万人を割るとの推計が出た。第2次ベビーブームがピークの1973年は209万人だった。世界人口とは逆に、半世紀で日本の赤ちゃんは4割に減った
▼昨年のベストセラー「80歳の壁」の著者で精神科医の和田秀樹さんは80歳を超えた人を「幸齢者」と呼び、我慢しない生き方を提唱して共感を呼んだ。医者の言いなりにならない。酒もたばこも無理に止めればストレス。養生術の発想転換だ
▼岸田文雄首相は年頭会見で「異次元の少子化対策」による出生率の反転を訴えた。結婚も子育ても選択肢は多様化している。80万人を回復する手だては果たして…。