年末から年明けにかけて、恒例のスポーツイベントが続々とテレビ中継された。食い過ぎた飲み過ぎたと腹回りを気にしつつ最近は専ら見る側だが、息詰まる勝負に、やる側だった10代の頃を思い出しもした

▼陸上やスキーの長距離競技では、心理的な限界値を上げることを教え込まれた。走りながら、苦しい、もうダメだと弱音を吐くレベルを少しずつ引き上げていく。まだまだつらくないと思い込む一種のマインドコントロールだ

▼一定の成績が得られると成功体験になり、スポーツを離れても、そうした過程をどこかで肯定している。内心にとどめておけばいいが、職場などで押しつけるのは考え物だ。相手が年の離れた若い人なら、なおのこと

▼「このしんどい局面を切り抜けた先に視界が開ける。今は歯を食いしばれ」と追い込むか。「心身の健康以上に大切なものなんてない。時には逃げたっていいよ」と寄り添うか。相手の性格や状況によるが、どちらが適切か見極めるのは容易でない

▼スポーツ界では勝利を目指すあまり、行き過ぎた指導が選手を自殺に追い込んだり、競技から排除してしまったりすることがある。時として限界値を上げる試みは必要ではあろうが、暴力で実現すべきことではない

▼五輪種目に加わったスケートボードなど、新顔のスポーツに打ち込む選手を見ていると、じとじとした昭和世代の惑いなど軽々と飛び越えていく奔放な力強さを感じる。競技を楽しむために努力を惜しまない姿はすがすがしい。

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