国の文化審議会は28日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界文化遺産登録を目指す2021年度の国内候補に「佐渡島(さど)の金山」(新潟県佐渡市)を選定するよう答申した。ただ、文化庁はユネスコに推薦書を提出するかどうかについては「候補選定は推薦決定ではない。政府内で総合的な検討を行う」と明言を避けた。かつて朝鮮半島出身者が坑内労働に従事したとへの反発が韓国側にあることから、日韓関係への影響を懸念しているとみられる。ユネスコへの推薦期限である来年2月1日までに対応を決める。

 県と佐渡市が提出した推薦書原案について文化審は、より表現を分かりやすくするなど修正すべき点はあるものの「顕著な普遍的価値が認められ得ると考えられる」と評価した。

 一方、文化庁は、文化審の答申と共に発表した報道資料に「国内推薦候補の選定は推薦の決定ではなく、これを受け今後、政府内で総合的な検討を行う」と記載。政府による審議のスケジュールについては未定とした。

 佐渡金山で戦時中、朝鮮半島出身者が働いていたことに韓国は反発しており、日本政府が判断に慎重になっているとみられる。文化庁文化遺産国際協力室の鈴木文孝室長は「(韓国の反発について)一部報道で承知しているが、コメントすることはない」とした。

 2月1日までに推薦書が順調に提出されれば、ユネスコの諮問機関による調査を経て、23年夏の世界遺産委員会で登録可否が審査される見通しとなる。ただ、韓国側の反発もあり実際に推薦されるかは不透明だ。

 佐渡金山は、世界遺産候補として10年に国内暫定リストに記載され、15年に県と佐渡市が初めて推薦書原案を文化庁に提出した。しかし、15年から18年まで4年連続で落選。20年に再び原案を提出したが、新型コロナウイルスの影響で審議が行われなかった。21年度に国内推薦を目指すのは佐渡金山だけで、国内推薦候補として有力視されていた。

 国内の世界遺産は現在、文化20、自然5の計25件となっている。