日韓間の最大の懸案解決へ、詰めの段階に入ったといえよう。ただ、韓国政府が示した解決案には原告側の異論も強い。
岸田政権は韓国の動向を注視しながら着地点を見いだすべきだ。
韓国政府は、元徴用工訴訟問題の解決策を議論する公開討論会を開き、日本企業の賠償支払いを韓国の財団に肩代わりさせる案を有力として公表した。
16日には日本で外務省局長間協議に臨み、正式に説明した。世論や日本側の反応を見極めた上で解決策を早期に決定する方針だ。
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は対日関係を重視し、元徴用工問題の解決に意欲を見せてきた。討論会は、国内の意見聴取の最終プロセスと位置付けられている。
解決策を巡っては、日韓間の協議で、財団が賠償を肩代わりした場合、賠償金の返還を被告日本企業に求める「求償権」を放棄する方向で調整している。
日本側は、財団が求償権を放棄するのを条件に、日本企業による財団への自発的な寄付を容認する方針だという。
日本政府は1965年の日韓請求権協定で元徴用工問題は解決済みとの立場で、賠償責任はないと主張してきた。韓国側が求償権放棄を決断すれば、日本側の意向に沿うものといえる。
元徴用工問題がこじれた発端は、2018年の韓国最高裁判決だ。朝鮮半島出身の元労働者らが、日本の植民地時代に強制労働をさせられたなどとして提訴し、最高裁は被告の日本企業に賠償を命じる確定判決を出した。
判決に基づき、差し押さえられた日本企業の資産を現金化する手続きが進められている。
現実化すれば、両国関係にさらなる深刻な影響が出かねず、解決が急がれていた。
ただ、韓国政府の案については、韓国国内で合意形成が図れるのか楽観できない。
原告支援団体や野党は「日本の責任を完全に免責してしまう」などと反対している。
韓国政府には、こうした声を聞きながら理解を求めていく姿勢が欠かせないだろう。見切り発車では反発を招き、問題解決がさらに長期化する恐れがある。
原告側は日本に謝罪を求めている。岸田政権は何ができるか検討し、懸念解消へ尽力すべきだ。
日韓は、軍事的脅威を増す北朝鮮や中国に対し防衛面で緊密に連携していかなればならない。
北朝鮮による日本人拉致問題の解決や、戦時中に「朝鮮半島出身者が強制労働させられた」と反発を受けている「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録についても韓国の協力が重要だ。
岸田文雄首相は「健全な日韓関係に戻すため、緊密に意思疎通を図る」との考えを示している。合意に向けて手腕を発揮する時だ。
