昨年来、本紙の読者投稿欄「窓」でよく目にするテーマがある。民生委員についてだ。なり手がなかなか見つからず、確保に四苦八苦しているという

▼そんな声を裏付ける記事が載った。昨年12月の全国一斉改選で、定数約24万人に対する欠員が1万5千人余りに上った。戦後最多とみられる。3年前の前回改選に比べ、欠員は3割以上増えた。本県の欠員は198人、新潟市も87人が不足している

▼民生委員は1人暮らしのお年寄り宅に足を運んだり、ひきこもりや児童虐待の相談に乗ったりして、行政や福祉サービスに橋渡しする。基本的に無報酬のボランティアで、厚生労働相が委嘱する非常勤の特別職地方公務員だ

▼魚沼市の地域包括支援センターに勤める社会福祉士は昨秋、窓欄への投稿でこんなことを書いていた。地域のお年寄りの実情をセンター側が全て把握するのは難しい。頼りになるのが民生委員だ。きめ細かく情報を提供してくれるので、介護サービスなどにつなげられる

▼暮らしの困りごとを解決する手助けをしてくれる存在だ。だが働くシニア層の増加や、地域の課題が複雑化して負担が増していることなどを背景に、なり手不足が深刻化している。民生委員がいない地域は住民と行政との距離が遠くなる

▼ウイルス禍や値上げラッシュで、世間の風はますます冷たい。風よけになるのが福祉や社会保障といったセーフティーネットだろうが、民生委員の橋渡しがなければ網の目からこぼれ落ちる人が続出しかねない。

朗読日報抄とは?