残された時間は過去最短になった。米科学誌が毎年発表している「終末時計」である。人類滅亡の時刻に見立てた午前0時までの時間は、あと90秒しかない。県内が猛烈な寒波に覆われる中、心まで凍り付きそうになる数字だ
▼これまでの最短は去年までの3年間の「あと100秒」だった。10秒短縮されたのはロシアによるウクライナ侵攻の影響が大きい。隣国に攻め込んだ大国が核兵器の使用をちらつかせている。わが国の周辺でも、異例の頻度でミサイル発射を続ける国がある。依然として、気候変動には有効な歯止めがかからない
▼時計の秒針が文字盤を1周半する、そんなわずかな時間しか残されていない。あたふたしているうちに過ぎ去りそう。即席が売りのインスタントラーメンさえ作れないような時間だ。その間に一体何ができるだろう
▼航空業界には「90秒ルール」がある。緊急時に非常用脱出口などを使って90秒以内に全員が脱出できるよう、機体を設計したり、乗務員を訓練したりすることが求められる
▼2007年に那覇空港で起きた中華航空機の事故では、乗客乗員165人の全員が脱出することができた。その直後に機体が爆発・炎上しており、速やかな脱出に失敗していれば大惨事になるところだった
▼そんな事例に勇気をもらう。短時間でも、できることはある。核兵器の使用をはじめとした戦争の脅威を取り除き、気候変動に対応する策を探し続けねばならないだろう。座して終末を待つわけにはいかない。