降りしきる雪の中、カラスの大群が風に舞っていた。この季節は群れで行動するという。数十羽どころか数百羽、時には千羽を超えることさえあるらしい。越冬のため渡ってくるミヤマガラスも大群を作ることで知られる
▼冬になると群れるのはなぜなのか。餌の少ない時期に多くの目があれば、見つける確率が高まる。繁殖期を前にパートナーも見つけやすくなる。こんな説がある(杉田昭栄「カラス」)。厳しい自然を生き抜く知恵なのだろうか
▼先日の紙面に、カラスにまつわる言葉を見つけた。濡羽色(ぬればいろ)である。カラスのようにつややかで緑や紫を含んだ黒のこと。濡烏(ぬれがらす)ともいう。古くから、つやのある美しい黒髪を指す際などに使われた
▼モノは水にぬれると色が濃くなる。詳しい説明は省くけれど、モノの表面のでこぼこが水に覆われると滑らかになり、固有の色を感じやすくなる。カラスは、雨にぬれるといっそう黒がくっきりとする。濡羽色は雨や雪の多いこの季節の彼らにぴったりの言葉だ
▼この色を見つけた記事が紹介していたのは、佐渡の岩ノリだった。岩場で波に洗われ、黒々と輝いていた。写真からも磯の香りとシャキシャキした歯応えが伝わってくるようだった
▼岩ノリが磯にびっしり張り付く様子に、肩を寄せ合うように群れるカラスの姿が重なった。その落とし物でひどく迷惑を被ることがある。ただ、寒風に耐えるたくましさは見習いたくもある。雨雪にぬれて本来の色を増すたたずまいを見て、そう思った。