子育てに王道はない。手探りを繰り返す毎日が、やがてわが家の子育てになっていく。いろいろなパパに話を聞き、それぞれが歩んできた「パパの細道」をのぞかせてもらう全5回の対談企画。第4回目のゲストは、新潟県警察の藤木雄也さん。まっすぐ突き進んだ一本道か、ワイルドに切り開かれた獣道か。今回はどんな細道が待っているだろうか。

横田孝優
コピーライター。9歳(男)・6歳(男)・6歳(女)の3児のパパ。企業や商品のブランディングやライティングなどを手がける他、新潟日報社発行のフリーペーパーasshにて「子に溺れる~長男+双子男女のエブリデイ~」を連載中。https://ztdn.net/

藤木雄也さん
新潟県警察交通機動隊 巡査長。2020年に白バイの運転技術を競う全国大会で優勝。3人の子ども(長男4歳・長女2歳・次男0歳)のパパで、第3子誕生時に40日間の育休を取得。妻を里帰り出産に送り出し、長男・長女と3人の日々を過ごした。

ワンオペの限界

横田 上の2人の子どもたちと過ごして、苦労を感じたこと、大変だったことはないですか?

藤木 例えば自分が料理を作っているときや、別の部屋にいるときに、子どもたちだけで遊ばせるじゃないですか。そのときに子どもたちから目を離すのが怖いというか。イスに乗って頭から落ちないかなとか。兄妹でよくけんかをして、たたいたり引っかいたりしてしまうのも心配でした。おとなしく過ごしてもらうもらうために、YouTubeを見せてもいましたね。

横田 そういうものも駆使しないと、なかなか難しいですよね。うちも子どもが3人いて、妻の仕事の都合で結構休日にワンオペがあるんですよね。体力を発散してもらわないと、と思って公園に連れて行くんですけど、3人が3方向に走りだすともうお手上げ。

藤木 そうですよね。

横田 全員見ておけないです。プールに連れて行っても「目を離さないでください」と言われますが、物理的に不可能です(笑)。

藤木 もう2人大人が欲しいですよね。

ゲームセンターの同じ機械で一緒に遊んでいる長男君と長女ちゃん。こぼれる笑顔から楽しさが伝わる

横田 そうですよね、大人の人数の方が多くないとそれはできません、みたいな。ワンオペの中で編み出した工夫や知恵はありますか?

藤木 ありきたりな答えになってしまうんですが、子どもたちが保育園に行っている間に全部やっておく。もうそれぐらいなんですよね。ずっと一緒にいたらまた違うかもしれませんが、保育園に行っているので、自分にはそのやり方が合っていました。

もっと任せていいんだ

横田 里帰り期間が終わって一番下の赤ちゃんとママが帰ってきたら元の生活に戻りますよね。でも、この40日間があったからこそ今も続いている変化はありますか?

藤木 40日間3人で生活できると分かったので、育休が終わってから妻が私に任せる家事や育児が増えました。例えば「お風呂に入れてきて、私が受け取るから」とか「料理作って」とか。妻も多少は楽になったんじゃないかな…と思うんですけど。

横田 もっと任せていいんだって気づいたんですね。ママは育休期間の感想をおっしゃっていましたか?

藤木 私の職場にすごく感謝していました。一番下の子に集中できたというのが何よりも大きかったみたいです。1人目のときはもちろん1人だけ見られるじゃないですか。2人目のときは、2歳差の上の子もまだ手がかかるので、両方の面倒を見ないといけないのが大変だったみたいです。今回は最初のときのように1人のお世話だけに集中できて、体力的にも精神的にも余裕ができたと言っていましたね。

横田 それは良かったですね。その期間を経て、お兄ちゃんお姉ちゃんに変化ってありました?

藤木 それまではやっぱり何でも「ママ、ママ」って妻の方に行くことが多かったんですけど、パパにも来てくれるようになりましたね。3人で生活して「パパも結構遊んでくれるな、身の回りのことをやってくれるな」というのが分かったんでしょうか。「抱っこして」「お風呂に入ろう」「一緒に寝よう」という感じで。

息子にごはんを食べさせている藤木さん。じっとパパを見つめる次男君(当時約8カ月)の目が印象的な一枚

次も育休を取る?

横田 もしもの話ですけど、もう1人お子さんが産まれるとしたら、また育休を取りますか?

藤木 取りたいですね。2人と過ごせたので、次は3人もいけるんじゃないかなって。

横田 大きく出ましたね~。

藤木 大したことはしてないんですが、それぐらい育児に対する自信というか、自分でも2人見られるんだなという発見がありました。私は泊まり込みの勤務で24時間家にいないときがあるので、妻はこんな小さい子を3人も見ているなんてすごいと思っていましたが、自分も少しだけでも近づけたかなと。妻の負担を減らすためにもまた育休を取れたらいいなと思います。ただもう4人目はいいですね(笑)。

横田 大変なこともたくさんあったとは思うんですが、すごくポジティブに捉えていらっしゃるんですね。

歯車が動き出すとき

藤木 私も妻に言われて初めて育休を取るという選択肢ができました。取ってみた結果、子どもたちと接する時間も増えましたし、妻の負担も減ったと思います。良いことばかりだと思うので、ぜひ活用してもらいたいですね。

横田 それは結構大事なことかもしれないですね。育休取得に向けて、パパが自主的に動けるのが理想だと思うんですよ、全てのママがそう言うと思う。それは大前提としてあって、でもそういう頭にならない男性が多いのも残念ながら事実だから。女性からもプッシュしてみることで、動いていなかった歯車が動き出して「パパが育休を取る」という方へ進む可能性は大いにあるのかなと感じますね。

藤木 周りの男性が取っていれば、私も「子どもが生まれた=育休を取ろう」という頭になったと思うのですが、私の中では結びつかなかったですし。

横田 後に続いている方はいるんですか?

藤木 育休の体験談を交通機動隊員たちに発表する機会がありまして、それを聞いた同僚からは「私も子どもができたら育休を取りたいです」とか、先輩からは「自分も3人子どもがいますけど、昔からもっと制度が周知されていれば取りたかったです」といった意見がありました。私の体験が、これから子どもが産まれる方たちに生かせれば良いなと思います。

パパに高い高いをされて笑っている次男君。壁に残る家族行事の装飾やバルーンからは、だんらんの気配を感じる