平安時代末、後白河天皇の皇子以仁王(もちひとおう)は権力の絶頂にあった平家を討伐すべしと令旨を発した。決起したものの京で討ち死にしたが、落ち延びたという伝説も阿賀町や三条市、長岡市などに残っており、歴史ミステリーのようだ
▼阿賀町では、地域おこしに取り組む「阿賀まちづくり株式会社」が昨秋、地元に残る足跡を掘り起こそうと墳墓見学会を初企画した。今秋もイベントを予定する。以仁王は今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも登場する。同社の関係者は、存在感のある役となることを期待する
▼この人物はどう描かれるか。これまでの小説やドラマでは悪役のことが多かった梶原景時だ。源頼朝亡き後、合議制で鎌倉幕府の中枢を担った13人の一人だが、うそや謀略を巡らせたことで知られる
▼景時は本県の歴史にも関わった。平氏滅亡後、今の胎内市を拠点にした武将の城長茂(じょうながもち)を庇護(ひご)し、長茂は頼朝の御家人に加わる。景時が幕府から追放され世を去った後は、恩に報いるためか幕府に弓を引いた。長茂の妹で弓の名手だった板額(はんがく)御前も戦った
▼だが幕府の歴史書「吾妻鏡」は、板額の弓の腕前を「百発百中」と敵ながら称賛した。そんな女性武将を、地元の児童は郷土学習の一環として学んでいる。嫁ぎ先である山梨県笛吹市とも交流し、学びを深めている
▼胎内市民の中には、板額も大河ドラマに登場することを期待する人がいる。魅力的で優れた人物として描かれれば、子どもたちの郷土愛も一層強くなるだろう。