昨年末、ユニークなミニバスケットボールの大会が千葉市で開かれた。監督やコーチは怒ることやプレー中に指示を出すこと、威圧的な行為が禁止された。子どもたちは自ら作戦を練って躍動した
▼スポーツでの勝利至上主義に一石を投じようと東京のイベント会社が企画し、バスケ日本代表で新発田市出身の富樫勇樹選手が所属するB1千葉が協力した。競技関係者からも関心を集め、申し込み段階では全国の男女計200チーム以上が手を挙げたという
▼この大会が注目を浴びたのは、スポーツ界に暴力やパワハラの問題が根深いことの裏返しかもしれない。日本スポーツ協会が設置した窓口への本年度の相談件数は、過去最多の300件超となる見通しだ
▼内訳では体罰などの暴力が減る一方、暴言が増加傾向で、無視や差別、罰走といったパワハラと合わせて過半数を占める。指導の名を借りて殴ったり蹴ったりするのは許されないという認識は広がったのかもしれないが、言葉の暴力が増え陰湿化しているようだ
▼少し前の本紙「窓」欄に、野球の試合でミスをした子どもを怒鳴り散らす指導者を見て気分が悪くなったという投稿があった。心をえぐられている子どもが、どれほどいるのか。相談窓口に持ち込まれるケースは氷山の一角なのかもしれない
▼問題をいっそう深刻にしているのは、暴力やパワハラに頼る指導者を擁護する保護者がいることだという。問われているのはスポーツ界だけではない。私たちの社会そのものだ。