年末年始、新潟市は雪がほとんど降らず、スノーダンプの出番はなし。「この冬は楽かな」。そう気を許していたら、大寒に帳尻を合わせるような寒波の波状攻撃である
▼気象台の観測データを見ると、上中越の山間部は積雪がすでに2メートル前後、ほぼ全県で平年を上回っている。十日町市もいつもの5割増し。普段なら、雪まつり名物の雪像作りの準備に入るころだ。だが、ウイルス禍の再拡大で2年続けて中止となった
▼本県初適用の「まん延防止等重点措置」は立春すぎまで続く。「去年の分も稼ぐぞっ」。こう勇んでいたスキー場や温泉、冬の観光関係者の落胆ぶりはいかばかりか
▼「雪のない雪害」。十日町雪まつり創始者で雪博士と呼ばれた故・高橋喜平さんは、こんな題名の随筆を書いている。雪国のスギの幼木は雪に押し倒されて成長する。少雪の年だと木は立ったまま。先端が雪上に顔を出すことが多くなり、ノウサギによる食害を引き起こす
▼そのノウサギは晩秋、褐色から白色に変身する。もし雪が満足に降らないと、白い体は保護色どころか、ワシやタカの格好の標的になってしまう。多すぎず少なすぎず。雪の「ほどほど」のバランスが、越後の自然や暮らしを支える。高橋さんは、そんな雪国の奥深さに魅了されていた
▼昨年は暖冬だった。だが上越市では、1月に24時間に1メートルを超すドカ雪が襲い、家屋倒壊が起きている。今年も、気まぐれな寒波に感染爆発の「第6波」-。平穏で「ほどほど」を願う冬が続く。