新潟市の佐潟が、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に登録されたのは1996年。「本当は越後平野全体を登録してもいいくらいなんだ」。当時こう話していたのは、現在の新潟市江南区に住み日本白鳥の会の設立に尽力した故本田清さんだった

▼越後平野は日本有数のコハクチョウ飛来地だ。新潟市には福島潟や鳥屋野潟など16の潟がある。隣接する阿賀野市には瓢湖もある。こうした水辺をねぐらとし、周囲の田んぼが餌場になる。ハクチョウは積雪などの状況に応じて、ねぐらや餌場を変えるらしい

▼四半世紀余がたち、本田さんの言葉が実現に近づいた。昨年6月、新潟市がラムサール条約の湿地自治体として認証を受けた。日本では鹿児島県出水市と共に、初めての認証となった

▼これを記念したシンポジウムが先ごろ開かれた。そこでは、こんな話を聞いた。湿地と都市は従来対立する概念だった。人間は自然を制圧し、生活に有利な環境をつくろうとしてきた。一方で、人間は次第に自然の恵みを再認識するようになった

▼湿地と都市の融合は、政令市の新たな姿を描くのかもしれない。湿地は教育や遊びの場として、さらには観光や農産物のブランド化の素材として大きな可能性を秘めているのではないか

▼新潟市の郊外では、田んぼで餌をついばむハクチョウの群れがそこかしこで見られる。県外、とりわけ首都圏の人を案内すると、驚きの声が上がる。この財産を使わない手はないはずだ。

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