物語で竹は不思議な存在として描かれる。かぐや姫は輝く竹から登場した。古事記では、黄泉(よみ)の国から逃げるイザナギがくしの歯を折って投げると途端にタケノコが生え、追っ手を足止めする
▼不思議さのゆえんは何より生長ぶりにある。1日に1メートルも育ち約3カ月で一人前になる。地下では茎が伸びて林を広げてゆく。いにしえの人たちは繁殖力に驚きつつ、日用品の原料や食材をもたらす竹林を手入れしてきたのだろう(沖浦和光「竹の民俗誌」)
▼翻って現代。プラスチック製品が普及し、タケノコは輸入が多くを占めるようになって放置竹林が増えた。背の高い竹は日光を遮り、他の木々を枯らす。暗い竹林の中では腐って倒れる竹も出てくる
▼県内竹林面積の半分を占める佐渡では今冬、雪で倒れた竹が停電の要因となった。電線に触れて漏電を起こし、修理に向かう道をふさいだ。竹林の大半が民間の所有という。市の担当者は「倒れそうだと分かっていても行政が手出しできない」と漏らす
▼「竹害」が広がる一方で、竹活用の試みも始まっている。田上町では昨年、商工会青年部などが放置竹林を使ったイベントを初開催した。所有者の了承を得て200本を切り出した。子どもたちも加わって竹あかりのアートを作り、町を彩った
▼イベントは県内外の2万4千人を呼び込んだ。「放置竹林も磨けば地域の宝になる」との主催者の言葉が頼もしい。今年も秋に開くという。竹害に悩む他の地域にもヒントを与えてくれそうだ。