和食のだしに欠かせない昆布の人気が米国でも高まりつつある。そんな話題を先日の本紙おとなプラスが紹介していた。有名レストランが創作料理に活用したり、菜食主義者から注目を集めたりしている。ワシントンでは1月、長岡市出身のすし店経営者らが主催した試食会が開かれた
▼昆布の魅力が海を越えようとしているようだ。もっとも、昆布はもともと旅をする食材である。国産の昆布の大半は北海道産で、かつては北前船によって新潟をはじめ各地に送られた。「昆布ロード」と呼ばれる
▼とりわけ、お隣の富山は一大集積地だった。江戸時代、薩摩藩は富山の薬売りを使って昆布を集め、琉球を経由して清国と取引したという。そうした歴史もあり、富山や沖縄には今も独特の昆布文化が根付いている
▼富山のコンビニやスーパーをのぞくと必ずと言っていいほど、とろろ昆布で巻いたおにぎりがある。昆布を巻き込んだかまぼこはよその地域ではめったにお目にかかれない。刺し身コーナーには、昆布で魚の身を挟んだ昆布締めが並んでいる
▼本県でも、佐渡沖で昆布を生産する取り組みが進む。周辺の海域は水温が高く、天然の昆布は採れないが、海洋深層水で種を育成する。昨年4月には、環境に配慮して生産されたことを示す日本農林規格(JAS)の有機認証を、藻類としては初めて受けた
▼昆布だしは動物性のだしほど自己主張をしないが、鼻孔をくすぐる上品な香りが持ち味だ。世界がその魅力に気づき始めている。