春の便りが相次ぐが、地域によってはまだ1メートルを超す根雪が残る。「雪囲いを取ると、やっと春が来る」。そんなお年寄りの声は胸に響く。若手なら、相当するのはタイヤ交換の日か
▼春の感じ方は人それぞれ。四季の区分も多様だ。気象庁は3月から5月までが春。旧暦の春は1月から。二十四節気では2月初旬の立春が初日だ。天文学上は春分から夏至までが春とされる
▼春分の日、つまり春の彼岸の中日は昼間と夜の時間が同じといわれるが、実際には昼の方が少し長い。彼岸に入ったきのう、本県では昼間が12時間1分に伸び、昼夜逆転した。昼は彼岸からどんどん長くなる
▼雪国の春といえば教育を巡る「雪解け問答」が知られる。1977年3月1日の衆院予算委員会。上越市出身で元教師の木島喜兵衛氏が海部俊樹文部大臣に問うた。「雪が解けたらどうなるというテストの問題が出たら、どうお答えになります」。海部氏は「水になると私は答えると思います」
▼「一般的にはそれが合格」。木島氏はそう応じつつ、春を待つ新潟県民の思いを代弁した。「雪が解けたら春になると答えたら誤りになるのです。けれども…」。木島氏は「理」の教育の偏重を批判しつつ「情」を評価する大切さを切々と訴えた
▼物事を進める上では理が不可欠だが、情も大切だ。庶民が苦しむ物価高や少子化の問題を扱う昨今の国会論戦には、理と情が行き渡っているだろうか。どちらも薄っぺらな問答ばかりなら春は遠いと言わざるを得ない。