新たな制度や技術を導入する前に、まず試行してみる。成果や課題を洗い出し、実際に導入するかどうかの判断材料とする。行政などが手掛ける「社会実験」は、すっかり定着した感がある

▼この国で本格的に始まったのは、1990年代後半のようだ。本紙をさかのぼると、最初に記事が登場したのは97年。当時の環境庁が二酸化炭素の削減のため、市街地へのマイカー乗り入れ規制や家庭での節電が、どのくらい効果があるかの測定に乗りだす、との内容だった

▼直近では、新潟市がまちなかでの次世代型電動車いすの使い勝手を検証した。長岡市は違法駐輪をなくそうと、アオーレ長岡前の歩道に短時間止められるスペースを試験的に設けた。いずれも、暮らしの中にある課題の解決を目指す

▼高騰するガソリン価格を抑えようと、政府は卸価格抑制のために補助金を支給する。政府が燃油の市場価格に介入するのは極めて異例だ。「壮大な社会実験」。経済産業省の関係者は、補助金支給をこんな言葉で表現したという

▼補助対象は元売り業者で、店頭価格は小売業者が競合店の価格などを踏まえて決める。地域によっては輸送コストなどを考慮すると、それほど下がらないのではとの声がある。効果は一時的とみる向きもある

▼そうした状況を見越した上での「社会実験」発言なのか。どの程度の効果があるかはやってみないと分からない。そんな本音もうかがえる。雪国では灯油代も家計に重くのしかかる。「実験」では済まない。

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