チェスは古くから、世界中で親しまれているゲームである。将棋と同様にさまざまな役割の駒を駆使し、相手の王を追い詰めた方が勝ちになる。「王手」に相当する言葉が「チェック」だ
▼辞書によると「相手を阻む」といった意味の古語が源流だという。そこから「阻止」「確認」「検査」などの意味で使われるようになった。私たち日本人も外来語であることを忘れそうなくらい、日常的に使う言葉だ
▼議会の大きな役割は行政の執行状況をチェックすることだとされる。統一地方選の前半戦で、本県では新たな県議と新潟市議の顔ぶれが決まった。緊張感を持ち、問題があれば行政にノーを突きつける姿勢が求められる
▼県議会には苦い記憶がある。県の財政危機が2019年に発覚するまで見抜けなかった。当時の県の情報開示が不十分だった面はあるにせよ、執行部との間に、どこかなれ合うような空気はなかったか
▼財政危機は今も県行政に重くのしかかる。財政健全化のため廃止されたり縮小されたりした事業は少なくない。県民生活への影響も大きい。議会のチェック機能が不十分だと、こうした不都合が起こるといういい例だ
▼将棋でいう「詰み」を、チェスでは「チェックメイト」と呼ぶ。これは「王は死せり」というアラビア語が源流だそうだ。「死」とは穏やかでないが、首長を頂とする行政が詰みの状態に陥らないよう議会のチェックは欠かせない。議員を選んだ私たちも、その仕事ぶりをチェックする必要がある。