マイナンバーカードが保険証としても使えるというので、かかりつけ医で試してみた。読み取り機にカードをかざし、顔認証をするよう言われたので、その通りにする

▼ところが認証画面に進まない。何のことはない、カードの向きを間違えていた。こちらのミスを棚に上げ、受付の担当者に「けっこう面倒ですね」と伝えると「そうですね」と同情された。いつもの保険証なら診察カードと一緒に手渡せば済む

▼図書館では貸し出しカードとしても利用できる。マイナカード一枚あればいいと思っていたら貸し出しカードの利用期限になった。更新手続きには両方必要という。しかも、手続きの一部は自分で端末を操作するよう求められた。暗証番号などが絡むからだろうか。慣れない人には、かなりのハードルだ

▼カード申請率は3月末で人口の76・3%に達した。お役所はさまざまなサービスに使えると旗を振るが、実感は乏しい。申請が増えたのは最大2万円分のポイント付与が後押ししたのが実態だ。もらえるのはありがたいが、最終的な財源は国民負担である

▼河野太郎デジタル相は以前、ポイント事業を「邪道」と評していた。カードを持つメリットを実感できることこそが「王道」のはずだが、こちらはまだまだ心もとない

▼普及を急ぐ余り、肝心の使い勝手が置き去りになっていないか。カードには行政の事務を効率化するメリットもあるという。普及を喜んでいるのは役所ばかり…という状況になってほしくはないのだが。

朗読日報抄とは?