何回やってもはい上がれない。頭が熱くなる。ごくたまに世の中が激変する。その不条理、痛快さが妙味なのか。日本発祥のトランプゲーム「大富豪」だ。普及に取り組む動きを先日の本紙おとなプラスが紹介していた
▼本県では「大貧民」の方が通りがいいかもしれない。4人ほどで遊び、場に出された札よりも強い札を順番に出していく。早く手札がなくなった者が勝ちになる
▼ルールは各地で多様だが、共通なのは大富豪に有利な不平等があること。最初のゲームで階級が決まると、大貧民は配られた札の中で一番強い札2枚を大富豪に渡さねばならない。逆に大富豪は最も弱い札2枚を大貧民にやる。いきなりの貧富の格差である
▼これでは大貧民の勝ち目は薄い。偶然に同じ数字4枚が手元にそろえば「革命」だ。大貧民が大富豪になる好機到来、最初に上がれば「下克上」で階級は逆転する
▼だが、現実社会の富豪の立場はずっと堅固なようだ。米誌フォーブス発表の今年の長者番付は、フランスの高級ブランドグループ、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)など世界的企業の実質トップが3年連続で上位3位を占めた。日本はユニクロの持ち株会社トップが連続1位だ
▼国際非政府組織(NGO)のオックスファムは1月、感染症禍の2020年以降に日本円で5千兆円以上の富が生まれたが、その3分の2が1%の富裕層に集中していると、不公正を訴えた。広がるばかりの格差に泣くのはゲームだけにしてほしい。