子どもたちは新しい教室に慣れただろうか。佐渡市の小中高校に島外から「離島留学」した児童生徒が学校生活を始めて1カ月ほどになる。家族で移住したり寮に入ったり。「島の文化に触れたい」「海でたくさん泳ぎたい」と胸を膨らませている
▼粟島浦村の「しおかぜ留学」はスタートして10年。乗馬など特色ある体験学習や島民との触れ合いが全国的に評価されている。祭りに参加する、満天の星を見る…都会から来た子どもには特に新鮮だろう
▼筆者も学生のころ、短期間だが英国で語学学校に通った。荒天ばかりの寂しい海辺の町。知人のいない地で、初めて「身一つの自分」を実感した。英語はそれほど身につかなかったが、異文化の中に身を置く経験は貴重だった
▼離島経済新聞社が発行するタブロイド紙「季刊リトケイ」によると今年1月現在、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島と橋でつながらない305の有人島に57万6千人余りが暮らす。同紙の昨年冬号では、奄美大島にルーツがある映画監督の河瀬直美さんらが島のよさなどを語っていた
▼「島では自分を見つめることができる」と河瀬さん。刺激や情報量の多い都会では、そうしたことが難しくなるという。芥川賞作家で、母が八丈島出身の滝口悠生さんは「狭さが面白い」と評した
▼日本の「本土」と呼ばれる地域だって島である。人口減や高齢化が一足先に進む離島に留学した若者は何を見るのか。離島の暮らしの中に問題解決のヒントが潜んではいないか。