「わけあり」と冠がつく商品がある。形がふぞろいで規格に合わない野菜であったり、型落ちの電化製品であったり、パッケージに傷がついた化粧品であったり。そうした理由があるからお安くしますというわけだ

▼ネット上には専門に扱うサイトもある。のぞいてみると、本県産のコメや日本酒も売っていた。品質は一般の商品と変わりないという宣伝文句通りなら、生産者には少し申し訳ないような気もするが、消費者としてはありがたい。フードロス削減や持続可能な社会づくりにもつながりそうだ

▼これも一種の「わけあり」といえるだろうか。布製の、いわゆるアベノマスクである。安倍政権時に配布されたものの、不良品が交ざっていたり、小さくて使いづらいと敬遠されたりした。結局は配布しきれず大量の在庫が問題視されたため、希望者に配るとしていた

▼政府によれば、約8千万枚の在庫に対し配布希望の申請が約37万件に上った。推計で2億8千万枚分以上となる。かつての不人気ぶりからすれば、驚くほどの注文数である

▼会員制交流サイト(SNS)上には、多様な再利用のアイデアが並ぶ。ガーゼや布巾として使ったり、中には野菜の種を発芽させるスプラウトの培地といったユニークな発想もあったりする

▼アベノマスクが一般的なわけあり品と違うのは、税金が使われている点だ。国民にそっぽを向かれて効果に乏しく、保管に多額の費用がかかった。配布コストも少なくないはず。反省を忘れてはなるまい。

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